メトトレキサートで吐き気・だるさがつらい方へ|フォリアミンの工夫、メトジェクト・生物学的製剤という選択肢
「メトトレキサートを飲むと、すごくだるい。気持ちが悪い。飲んだ日も次の日も、全然動けない。こんなにつらいのは私だけでしょうか?」
私だけではありません。
メトトレキサートを飲んだ後の吐き気や倦怠感で、せっかくの週末が、気持ち悪くてだるいまま終わってしまう方がいます。
翌日までつらさが続く方もいれば、長い方では、服用した日から週末の間ずっと動けず、休みが全部つぶれてしまうこともあります。
メトトレキサートは、関節リウマチ治療の中心となる、とても大切な薬です。
一方で、合わない方には、とことん合わない薬でもあります。
私たち関節リウマチを治療する医師の目標は、単に検査値を下げることでも、メトトレキサートを使い続けることでもありません。
関節の炎症を抑え、患者さんに毎日を楽しく過ごしていただくことが目標です。
そのためにメトトレキサートを使用していますが、薬による吐き気や倦怠感で、かえって患者さんを苦しめるわけにはいきません。
これは、とても大切なことです。
「薬だから仕方がない」「みんな我慢しているのだろう」と考えず、遠慮せずに主治医の先生へ相談してください。
メトトレキサートは大切な薬ですので、まずは現在の治療を大きく変えず、小さな変更によって飲みやすくならないかを考えます。
それでも内服を続けることが難しい場合には、メトジェクトや生物学的製剤などを含めた、大きな治療変更を考えていきましょう。
医師紹介・内科施設案内はこちら
メトトレキサートが飲みやすくなるかもしれない、小さな変更
メトトレキサートは関節リウマチ治療の大切な薬ですので、吐き気や倦怠感がある場合にも、すぐに中止するのではなく、まずは現在の治療を大きく変えずに副作用を軽くできないかを考えます。
主治医の先生と相談しながら、次のような小さな変更を検討できます。
メトトレキサートの48時間後(翌々日)に飲んでいる場合には、24時間後(翌日)へ変更する選択肢があります。
フォリアミン5mg(1錠)から10mg(2錠)へ増量する選択肢があります。
ナウゼリンなどの吐き気止めを、メトトレキサートを飲む前に予防的に使用します。
メトトレキサートを飲む時間や、1週間分を1回または複数回に分ける方法を見直します。
実際の変更は自己判断で行わず、現在の処方内容を確認しながら主治医の先生と相談してください。
フォリアミンは翌日と翌々日のどちらに飲むのがよいのでしょうか?
フォリアミンは、メトトレキサートによる吐き気、倦怠感、口内炎、肝機能異常などを予防・軽減するために使用する葉酸製剤です。
フォリアミン錠は、1錠が5mgです。
日本リウマチ学会の資料では、メトトレキサートの最終服用から24~48時間後、つまり翌日または翌々日にフォリアミンを服用するとされています。
現在、メトトレキサートを飲んだ翌々日、約48時間後にフォリアミンを服用している方では、翌日、約24時間後へ変更する選択肢があります。
翌日と翌々日のどちらが最もよいかについて、人を対象として直接比較した十分な臨床試験はありません。
一方、基礎研究では、メトトレキサートと葉酸を同じ日に投与した場合と、翌日に投与した場合で、メトトレキサートの抗炎症効果に大きな差がみられなかったという報告があります。
これは人を対象とした臨床試験ではありませんが、フォリアミンを翌日に飲んでも、メトトレキサートの効果は大きく変わらないのではないかと考え、当院では翌日に処方することが多いです。
少しでも早く、吐き気や翌日の倦怠感を軽くしたいと考えているためです。
実際に飲む曜日や時間は、メトトレキサートの服用方法によって異なります。自己判断で変更せず、処方した医師と相談してください。
フォリアミンを5mg(1錠)から10mg(2錠)へ増やす方法
フォリアミン錠は、1錠が5mgです。
フォリアミン5mg(1錠)を服用していても、吐き気、翌日の倦怠感、口内炎、肝機能異常などが続く場合には、10mg(2錠)へ増量することがあります。
フォリアミンを10mg(2錠)へ増やせば、すべての副作用がなくなるというわけではありません。
2026年に報告された研究でも、フォリアミンを週5mgから週10mgへ増やすことで、メトトレキサートによる副作用全体が明らかに減るとは確認されませんでした。
一方で、倦怠感が軽くなる方もいる可能性が示されており、試すことのできる方法の一つです。
副作用がない方へ、一律にフォリアミンを10mg(2錠)処方するわけではありません。
吐き気、翌日のだるさ、口内炎、肝機能などを確認しながら、必要な場合に5mg(1錠)から10mg(2錠)への増量を検討します。
吐き気止めを予防的に使う方法
メトトレキサートを服用した後に吐き気が起こる方では、吐き気が出てから薬を飲むだけでなく、メトトレキサートを飲む前に吐き気止めを使用する方法があります。
当院では、症状に応じてドンペリドン(ナウゼリン®など)を予防的に処方することがあります。
毎回、メトトレキサートを飲んだ後のほぼ同じ時間帯に吐き気が出る方では、あらかじめ吐き気止めを使用することで症状を軽くできないかを確認します。
メトトレキサートを飲む曜日が近づくだけで、吐き気が心配になる方もいます。
フォリアミンと吐き気止めは役割が異なるため、両方を組み合わせることもあります。
吐き気止めが適しているかは、現在使用している薬や患者さんの状態を確認して判断します。
メトトレキサートを飲む時間・分割方法を見直す
メトトレキサートには、主に次のような飲み方があります。
メトトレキサートを1日で服用する場合と、2日間に分けて服用する場合の一例です。実際の服用方法は、処方された内容に従ってください。
出典: 日本リウマチ学会『メトトレキサートを使用する患者さんへ 第4版』 より引用
メトトレキサートを1回で飲むと吐き気が強い方では、飲む時間を変更したり、1週間分を分けて飲んだりする方法を試すことがあります。
一方で、メトトレキサートを分けて飲めば、必ず吐き気が減るわけではありません。
海外で行われた比較試験では、メトトレキサートを分けて飲むことで、早い時期に効果が現れる可能性は示されましたが、24週時点では、1回で飲む方法より明らかに優れているとは確認されませんでした。
意外にも、分けて飲んだ患者さんでは、治療を続けにくくなる症状や肝機能値の上昇が数値上多くみられました。
この結果は本当に驚きました。これまでは、吐き気などを減らすために、慣習的にメトトレキサートを分割して処方することがありました。
しかし、この試験結果からは、少なくとも分割投与が副作用の面で明らかに優れているとはいえません。
飲み方が分かりやすく、服用間違いを防ぎやすいためです。
ただし、1回で飲むと吐き気が強い場合には、患者さんの症状や生活に合わせて、飲む時間や分割方法を見直すことがあります。
これらの小さな変更でも内服が難しい場合の、大きな治療変更
フォリアミンを飲む時期や量、吐き気止め、メトトレキサートを飲む時間や分割方法を変更しても、吐き気や翌日の倦怠感が強く、内服を続けることが難しい場合があります。
また、翌日の倦怠感が強く、関節の炎症を抑えるために必要な量までメトトレキサートを増量できない方もいます。
その場合には、患者さんが無理をしてメトトレキサートを飲み続けるのではなく、治療方法を大きく変更します。
飲み薬から、同じメトトレキサート成分の週1回自己注射へ変更します。
吐き気や倦怠感が強くない量までメトトレキサートを減らし、生物学的製剤を追加します。
メトトレキサートを終了し、メトトレキサートなしで使用を検討できる生物学的製剤を選びます。
この3つは、1から順番にすべて試さなければならない治療ではありません。
関節の炎症、年齢、腎機能、感染症のリスク、これまで使用した薬、費用、自己注射への抵抗感、患者さんの希望、将来の治療選択肢を合わせて選びます。
内服からメトジェクトという自己注射へ変更する
メトジェクトは、メトトレキサートを週1回、ご自宅で皮下注射する薬です。
当院ではペン型の製剤を使用しています。
「注射」と聞くと、毎日針を刺す治療や、病院で点滴を受ける治療を想像する方もいるかもしれません。
メトジェクトは、週に1回、お腹や太ももなどの皮膚にペンを当てて行う自己注射です。
ご本人が注射する場合はお腹または太もも、ご家族が注射する場合は二の腕の後ろ側も注射場所になります。実際の注射方法は、医師・看護師から受けた説明に従ってください。
出典: 日本リウマチ学会『メトトレキサートを使用する患者さんへ 第4版』 より引用
有効成分は、内服のメトトレキサートと同じです。
別の種類の強い薬へ変更するというより、メトトレキサートを体内へ入れる方法を、飲み薬から皮下注射へ変更する治療です。
飲み薬からメトジェクトへ変更することで、吐き気が軽くなる方もいます。
一方、同じメトトレキサートであるため、すべての方で吐き気や倦怠感がなくなるわけではありません。
フォリアミンや吐き気止めを調整しても、吐き気が強くて内服できない場合や、翌日の倦怠感が強く、必要な量までメトトレキサートを増量できない場合には、メトジェクトへの変更を検討します。
メトジェクトの薬剤費
当院で使用しているペン型製剤の薬価は、使用する量によって異なります。
週1回を4週間使用した場合の3割負担は、薬剤費だけでおおよそ次の金額です。
2026年7月時点の薬価をもとにした概算です。診察料、検査料、処方に関する費用などは含みません。薬価改定や自己負担割合により、実際の金額は変わります。
メトトレキサートを少量にして、生物学的製剤を追加する
メトトレキサートを完全に中止せず、吐き気や倦怠感が日常生活に影響しない量まで減らし、その量を治療の土台として残す方法です。
そのうえで、生物学的製剤を追加して関節の炎症を抑えます。
EULAR 2025 updateでは、メトトレキサートを中心とした治療で目標に到達しない場合には、生物学的製剤の追加を考える流れが、これまでより明確になりました。
メトトレキサートの量を減らした結果、吐き気は軽くなっても関節の腫れや炎症が残る場合には、メトトレキサートを減らしたまま様子を見るだけではなく、生物学的製剤の追加を考えます。
特にアダリムマブなど一部のTNF阻害薬では、メトトレキサートを併用することで、薬に対する抗体ができにくくなり、効果が安定しやすくなる可能性があります。
そのため、メトトレキサートを完全に中止せず、副作用が出ない少量を残すことに意味がある場合があります。
吐き気やだるさのためにメトトレキサートを十分量まで増やせない場合でも、少量のメトトレキサートと生物学的製剤を組み合わせることで、治療を組み立てられることがあります。
メトトレキサートを中止し、生物学的製剤へ変更する
吐き気や倦怠感が非常に強い場合や、腎機能の低下などによってメトトレキサートを安全に使用しにくい場合には、メトトレキサートを中止します。
その場合には、アバタセプトやトシリズマブなど、メトトレキサートを併用せずに使用を検討できる生物学的製剤を選ぶことがあります。
メトトレキサートを使用しない治療が、すべての患者さんに適しているわけではありません。
現在、メトトレキサートを安全に少量使用できる方では、その量を残して生物学的製剤を使用する方法もあります。
年齢を重ねて腎機能が低下すると、将来メトトレキサートを使用しにくくなることがあります。
現在メトトレキサートを安全に少量使用できる方では、少量のメトトレキサートと生物学的製剤を組み合わせ、アバタセプトやトシリズマブなどを将来の選択肢として残しておくという考え方もあります。
一方、すでに腎機能が低下している方や、吐き気や倦怠感が非常に強い方では、現在の時点からメトトレキサートを使用しない治療を選ぶ方がよい場合があります。
これは全員に同じ順番で治療するという意味ではありません。患者さんの状態に応じて選びます。
小さな変更と大きな変更をどう選ぶか
吐き気があるから、必ずメトジェクトへ変更するわけではありません。
また、メトジェクトを試してからでなければ、生物学的製剤へ進めないわけでもありません。
治療方法は、次の内容を合わせて考えます。
関節の炎症は落ち着いており、吐き気だけが問題になっている方では、フォリアミン、吐き気止め、服用方法、メトジェクトなどから考えることがあります。
一方、関節の腫れや炎症が強く残っている方では、飲み方の工夫だけを長く続けるより、少量のメトトレキサートと生物学的製剤を組み合わせる方がよい場合があります。
小さな変更で続けられるのか、治療方法を大きく変更した方がよいのかを、関節の状態と副作用の両方から考えます。
メトトレキサートを飲むたびに週末がつぶれてしまうことは、治療を考えるうえで軽い問題ではありません。
診察の際には、「吐き気があります」だけでなく、「翌日まで動けない」「週末が全部つぶれてしまう」と、生活への影響も主治医の先生へ伝えてください。
当院での治療継続・転院を希望される方へ
メトトレキサートの吐き気や翌日の倦怠感が強く、当院で治療を継続したい方や、現在の医療機関から当院への転院を希望される方を診療しています。
すでにほかの医療機関で治療中の方は、まず現在の主治医の先生へ、吐き気や倦怠感について遠慮せずに相談してください。
当院では、診断や治療方針について意見だけをお伝えするセカンドオピニオン外来は行っていません。
当院で継続して治療を受けることを希望される方を対象に、現在の関節の状態、メトトレキサートの量、フォリアミンの飲み方、副作用、腎機能、これまで使用した治療薬などを確認します。
転院を希望される場合には、最近の血液検査結果、お薬手帳、現在の薬を飲む曜日や量が分かるものをご持参ください。
吐き気や翌日の倦怠感でメトトレキサートを続けにくい方、メトジェクトや生物学的製剤を含めて治療を見直したい方は、リウマチ・膠原病外来で確認します。
当院での継続診療または転院を希望される方が対象です。
関節リウマチの診療予約 MTXの吐き気・倦怠感、メトジェクト、生物学的製剤、転院後の継続診療まとめ
メトトレキサートによる吐き気や翌日のだるさで、せっかくの週末がつぶれてしまう方は、決して一人ではありません。
合わない方には、とことん合わないことがあります。
まずは、現在の治療を大きく変えずにできる小さな変更を考えます。
これらの小さな変更をしても内服を続けにくい場合には、治療方法を大きく変更します。
これらは、決められた順番ですべて試す治療ではありません。
関節の炎症、副作用、年齢、腎機能、感染症リスク、費用、自己注射への抵抗感、患者さんの希望、将来の治療選択肢を合わせて考えます。
私たちの目標は、患者さんがメトトレキサートを我慢して飲み続けることではありません。
関節の炎症を抑えながら、毎日を楽しく過ごしていただくことが治療の目標です。
吐き気や倦怠感で生活がつらくなっている場合には、遠慮せずに主治医の先生へ相談してください。
浅井 昭雅(医師・博士(医学)・日本リウマチ学会認定リウマチ専門医・指導医・日本腎臓学会認定腎臓専門医)




