関節リウマチへの生物学的製剤(バイオ)の自己注射|長久手クリニック

生物学的製剤(バイオ製剤)について
関節リウマチの治療には、メトトレキサートなどの飲み薬が一般的ですが、効果が不十分な場合や進行が早い場合には生物学的製剤(バイオ製剤)が選択肢となります。
長久手クリニックではご自身で自信がつくまで、院内で看護師の見守り下で自分で注射していただけます。80歳代の方でも自分で注射されています。
メトトレキサートと異なって、吐き気や口内炎などの自分で感じる副作用は少ないです。また、肝臓や腎臓が悪くても投与が可能です。
長久手クリニックで主に使用している生物学的製剤についてご説明します。
自己注射可能な生物学的製剤の種類
TNF阻害薬
- エタネルセプトBS(1ヶ月に3割負担で13,470円):1~2週ごとの皮下注射
- アダリムマブ(ヒュミラ®、アダリムマブBS®):2週ごとの皮下注射
- ゴリムマブ(シンポニー®)(3割負担で31,900円):4週ごとの皮下注射
- セルトリズマブペゴル(シムジア®):2週ごとの皮下注射
- オゾラリズマブ(ナノゾラ®):4週ごとの皮下注射
IL-6受容体阻害薬
- トシリズマブ(アクテムラ®)(3割負担で19,560円):4週ごとの点滴または2週ごとの皮下注射
- サリルマブ(ケブザラ®):2週ごとの皮下注射
T細胞共刺激経路阻害薬(CTLA-4)
- アバタセプト(オレンシア®)(3割負担で34,260円):1週ごとの皮下注射
長久手クリニックで主に使用している生物学的製剤
・エタネルセプトBS・シンポニー
・オレンシア
これら以外の治療ももちろん対応可能ですので、ご希望の際はご相談ください。
各製剤の特徴
🐰エタネルセプトBS 費用が安い、エタネルセプトBSのもとになったエンブレルは安全性・エビデンスが豊富
エタネルセプトBSはエンブレルのバイオシミラーで、生物学的製剤の中では比較的安価です。エタネルセプトBSのもとになったエンブレルはエビデンスが豊富な薬剤です。
特に高齢の関節リウマチ患者さんにも安心して使用できるデータがあります。
① メトトレキサート(MTX)を併用しながら寛解・低疾患活動性に達した場合、MTXを休薬してもエタネルセプト単独で有効性を維持できる(CAMEO試験)。
② 65歳以上の患者さんとそれ未満の患者さんで、効果・安全性に有意差がない。
これらもあってイギリスの安全性ガイドラインでは、感染リスクが高い患者さんに対してアバタセプトとともに推奨されています。
1週間ごとの投与はデメリットに思えるかもしれませんが、感染症などの合併症が起きた際に中止しやすいのがメリットです。
長久手クリニックでは、基本的にメトトレキサートと併用して使用しています。
🐰シンポニー 投与間隔が1ヶ月に1回
シンポニーは4週間に1回の皮下注射ですので投与頻度が少ないです。注射が苦手な方やご自宅で一人で注射したくない方などが選ばれています。 メトトレキサートを使用していない場合でも有効成分を増量可能で、効果を強化できます。 重症感染症が少ないとの報告があります。
🐰オレンシア 感染症リスクが低く、安全性が高い
オレンシアは、 高齢の患者さんでも感染症のリスクを高めずに治療が可能。
メトトレキサートを併用できない方にも効果が期待できる。
間質性肺炎の悪化防止や改善の可能性も示唆されている。
ただし、費用が高めです。
関節リウマチ以外の自己注射対応薬
- 骨粗鬆症治療:テリボン(テリパラチド)
- 糖尿病治療:マンジャロ(チルゼパチド)
- 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)・気管支喘息治療:ヌーカラ(メポリズマブ)
副作用について
生物学的製剤には以下のような副作用のリスクがあります。
- 感染症(B型肝炎や結核の再活性化、帯状疱疹など)
- 悪性腫瘍、リンパ腫など
- アナフィラキシー(重篤なアレルギー反応)
薬剤ごとに注意すべき副作用が異なりますので、診察時に詳しくご説明いたします。
まとめ
生物学的製剤にはさまざまな選択肢があります。
長久手クリニックでは、患者さん一人ひとりの状態(肺・腎臓・肝臓の機能など)を慎重に判断し、最適な治療薬をご提案するよう心がけています。
日本リウマチ学会認定のリウマチ専門医・指導医として、関節リウマチや膠原病の診断と治療に取り組んでいます。
さらに、日本腎臓学会認定の腎臓専門医として、高血圧・脂質異常症・高脂血症などの内科疾患についても、総合的に診療を行っています。