メトトレキサート(リウマトレックス)|関節リウマチと診断された際に知っておきたい治療の基本の話
「関節リウマチ」と診断されたばかりの今、これからの生活がどうなるのか、痛みや治療のことなど、さまざまな不安で胸がいっぱいかもしれません。
でも、どうかご安心ください。
リウマチの治療はこの10~20年で大きく進歩しており、適切なタイミングで治療を始めることで、関節の破壊を防ぎながら、これまで通りの生活を送れている方がたくさんいらっしゃいます。
長久手クリニックは、患者さん一人ひとりの気持ちを優先に、無理なく安心して治療を続けられるよう、サポートしていきます。
関節リウマチの治療では、まずメトトレキサートを安全に使用できるかを考えます。
メトトレキサートは、多くの患者さんで最初に検討する治療薬です。
ただし、メトトレキサートを使うこと自体が治療の目的ではありません。
副作用を確認しながら関節の炎症をしっかり抑えることが目的です。メトトレキサートを続けにくい場合や、十分な効果が得られない場合にも、次の治療方法があります。
この記事では、メトトレキサートを始めたばかりの方に向けて、薬の役割、飲み方、フォリアミン、副作用、体調不良時の対応、続けにくい場合の選択肢について説明します。
治療のメリットとデメリットをご説明し、ご納得いただいたうえで、一緒に治療方針を考えていきます。
私たち長久手クリニックは、患者さんがご自身で「選ぶ」ことを大切にし、その選択を尊重します。
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日本リウマチ学会が、メトトレキサートを使用する患者さん向けに作成した冊子です。
日本リウマチ学会『メトトレキサートを使用する患者さんへ 第4版』を読む
メトトレキサートやフォリアミンを飲む曜日、回数、量は患者さんによって異なります。実際の使用方法は、処方された内容を確認してください。
関節リウマチとは?
関節リウマチは、免疫の異常によって関節に炎症が起こる病気です。
手足の関節の腫れや痛みが続き、炎症を十分に抑えられないまま経過すると、関節の軟骨や骨が傷み、変形や破壊につながることがあります。
関節が壊れてから元に戻すことは難しいため、関節が壊れる前に炎症を抑えることが大切です。
早期発見・早期治療により、関節のダメージを最小限に抑え、普通の生活を送ることができる時代になっています。
長久手クリニックでは、長久手市を中心に、名古屋市名東区、日進市、瀬戸市、尾張旭市などから受診される患者さんの、関節リウマチや膠原病の診断・治療を行っています。
関節リウマチに対してまず考えるお薬:メトトレキサート
関節リウマチの治療薬の中心となるのが、メトトレキサートです。
メトトレキサートは、リウマトレックス®、メトレート®、メトトレキサート錠・カプセルなどの商品名で処方されます。
メーカーによって名前や剤形は異なりますが、有効成分はメトトレキサートです。
日本リウマチ学会の患者さん向け冊子では、約7割の患者さんに関節の痛みや腫れを軽くする効果がみられ、最終的に約3割の患者さんが、ほぼ痛みや腫れのない寛解という状態になると説明されています。
メトトレキサートには、現在の痛みや腫れを抑えるだけではなく、将来の関節破壊を抑える効果があります。
関節リウマチ治療の中心となり、その後に別の薬を組み合わせる際にも治療の土台となるため、「アンカー薬剤」と呼ばれています。
関節リウマチと診断したら、まずメトトレキサートを治療の中心として使用できるかを考えます。
腎機能、肝機能、肺の状態、感染症、妊娠の予定などから安全に使用しにくい場合には、別の治療を考えます。
使用できる場合には、効果と副作用を確認しながら、その方に合う量へ調整します。
使用前に確認すること・検査
メトトレキサートを安全に使用できるかを判断するために、次のような検査を行います。
最近の健診などで胸部レントゲンを撮影しており、画像や結果を確認できる場合には、改めて撮影しないこともあります。
肺や呼吸器の症状、過去の肺疾患、レントゲン所見などから詳しい確認が必要と判断した場合には、胸部CTなどを追加します。当院では院内でCT検査が可能です。
検査だけでなく、次の内容も確認します。
メトトレキサートはどうやって飲むの?
メトトレキサートは、通常、週6mgまたは8mg程度から開始します。
関節の腫れや痛み、副作用、年齢、体格、腎機能などを確認しながら量を調整します。
効果が十分でない場合には週10~12mgまで増量することが多く、日本では最大週16mgまで使用できます。
メトトレキサートは、1週間単位で使用する薬です。
1週間分を決められた曜日に1回で飲む方法、同じ日に2回に分ける方法、最大2日間に分ける方法があります。
飲む曜日、回数、量は患者さんによって異なります。処方された内容を確認してください。
当院では、飲み方が分かりやすいことと、飲み間違いを防ぐことを重視し、通常は1週間分を1回で服用していただく処方が多いです。
ただし、使用量や患者さんの状態によっては、分けて服用していただくこともあります。
どの飲み方がよいかは、診察時に一緒に確認します。
フォリアミンはなぜ飲むの?
メトトレキサートは、葉酸の働きを抑えることなどによって関節の炎症を鎮めます。
一方で、葉酸の働きが抑えられることに関連して、口内炎、吐き気、下痢、倦怠感、肝機能異常などが起こることがあります。
これらの副作用を予防・軽減するために使用するのが、葉酸製剤であるフォリアミン®です。
日本リウマチ学会の資料では、メトトレキサートの最終服用から24~48時間後、つまり翌日または翌々日にフォリアミンを服用するとされています。
当院では、少しでも早く吐き気や倦怠感を軽くしたいと考え、原則として翌日にフォリアミン5mgを服用していただく処方が多いです。
吐き気、倦怠感、口内炎、肝機能異常などがある場合には、フォリアミンの量を調整することがあります。
フォリアミンの調整、吐き気止め、メトトレキサートの量や飲み方の見直しなど、いくつかの方法があります。
詳しい考え方は、次の記事で説明しています。
効果はどのように確認するの?
メトトレキサートは、飲んだ直後に痛みを止める鎮痛薬ではありません。
服用を始めた後は、少しずつ関節の腫れや痛みが減っているかを確認します。
血液検査の数値だけではなく、実際の関節の腫れ、朝のこわばり、日常生活で困っていることなどを合わせて判断します。
必要に応じて、関節エコーで関節内に炎症が残っていないかを確認します。
少ない量で十分に効果が出る方もいます。
一方、少ない量では炎症を十分に抑えられず、安全に使用できる範囲で増量した方がよい場合もあります。
副作用を我慢して量を増やすのではなく、患者さんが続けられる範囲で、関節の炎症を十分に抑えられる治療を考えます。
副作用と定期検査
メトトレキサートの主な副作用には、次のようなものがあります。
副作用には、フォリアミンの調整、吐き気止め、飲み方の変更、メトトレキサートの減量によって治療を継続できるものがあります。
一方、早めの対応が必要な副作用もあります。
メトトレキサートを開始した後は、開始初期には2~4週間ごとを目安に診察と血液検査を行い、効果と副作用を確認します。
その後も定期的に、白血球、血小板、貧血、肝機能、腎機能、関節リウマチの炎症などを確認します。
体調不良のときは、メトトレキサートを真面目に飲みすぎないでください
自己判断でメトトレキサートを増量してはいけません。
一方で、熱がある、感染症が疑われる、食事や水分が十分にとれないなどの体調不良時にも、決められた日だからと無理に飲む必要はありません。
体調不良の際には、メトトレキサートは真面目に飲みすぎないでください。
当院では、次のような場合には、メトトレキサートを一時的に休み、処方を受けている医療機関へ連絡していただくよう説明しています。
体調不良時は、関節リウマチの薬を予定どおり飲むことより、感染症や脱水による副作用を避けることを優先します。
メトトレキサートを休む場合でも、フォリアミンは処方されたスケジュールどおり服用してください。
妊娠・授乳・手術・予防接種について
妊娠・授乳
妊娠中と授乳中は、メトトレキサートを使用できません。
ご自身またはパートナーの妊娠・出産を希望する場合には、女性・男性とも、妊娠前に計画的な中止について主治医と相談してください。
手術や歯科処置
手術や歯科処置を受ける場合には、メトトレキサートを使用していることを、主治医と処置を担当する医師・歯科医師の双方へ伝えてください。
手術の内容、感染症の有無、術後に食事や水分をとれるかなどによって、休薬するかどうかを判断します。
予防接種
インフルエンザ、肺炎球菌、新型コロナウイルス、不活化または組換え帯状疱疹ワクチンなどは、メトトレキサート使用中でも接種できます。
一方、麻疹、風疹、水痘、生ワクチンの帯状疱疹ワクチンなどの生ワクチンは、原則として接種できません。
接種前に、メトトレキサートを使用していることを医師へ伝えてください。
もしメトトレキサートを続けにくいときは
メトトレキサートは関節リウマチ治療の中心となる薬ですが、すべての方が同じように使用できるわけではありません。
吐き気や翌日のだるさが強い方、口内炎などの副作用が出る方、腎機能や肝機能などの理由で使用しにくい方もいます。
そのような場合でも、関節リウマチの治療ができなくなるわけではありません。
メトトレキサートを我慢して続けるか、治療を諦めるかの二択ではありません。
副作用、関節の炎症、年齢、腎機能などを確認しながら、その方が続けやすく、炎症を十分に抑えられる方法を考えていきます。
内服が難しい場合には、メトジェクトという選択肢があります
メトジェクトは、メトトレキサートを週1回、ご自宅で自己注射する薬です。
当院ではペン型の製剤を使用しています。
毎日注射する薬ではなく、病院で点滴を受ける薬でもありません。週に1回、お腹などの皮膚にペンを当てて、ご自身で行う皮下注射です。
有効成分は内服のメトトレキサートと同じです。
薬の種類を大きく変えるというより、メトトレキサートを体内へ入れる方法を、飲み薬から皮下注射へ変更する治療です。
飲み薬では続けにくくても、メトジェクトへ変更することでメトトレキサート治療を続けられる方がいます。
吐き気や翌日のだるさへの具体的な対処方法、メトジェクトの使い方や費用については、 「メトトレキサートで吐き気・だるさがつらい方へ」 で詳しく説明しています。
メトトレキサートだけで効果不十分なときは
メトトレキサートを安全に使用できる量まで調整しても、関節の腫れや炎症が残る方もいます。
その場合、効果不十分な治療を同じまま長く続けるのではなく、生物学的製剤など、次の治療を考えます。
生物学的製剤へ進む場合でも、メトトレキサートを必ず中止するわけではありません。
メトトレキサートを治療の土台として残し、生物学的製剤を追加することがあります。
一方、メトトレキサートを安全に使用できない場合には、メトトレキサートを使用せずに治療を組み立てることもあります。
大切なのは、メトトレキサートを使い続けることではなく、その方の関節の炎症を十分に抑えることです。
メトトレキサートを始めてから、どの段階で生物学的製剤を考えるのかは、次の記事で詳しく説明しています。
生物学的製剤の種類、自己注射、費用、副作用については、 「関節リウマチの生物学的製剤(バイオ)|自己注射の種類・選び方・副作用」 をご覧ください。
当院での治療開始・転院を希望される方へ
関節リウマチと診断され、当院で治療を開始したい方や、現在の医療機関から当院へ転院して継続治療を希望される方を診療しています。
当院では、診断や治療方針について意見だけをお伝えするセカンドオピニオン外来は行っていません。
当院での継続診療や転院を希望される方を対象に、現在の病状、これまでの治療内容、副作用、年齢、腎機能などを確認し、今後の治療方針を検討します。
転院を希望される場合には、これまでの採血結果とお薬手帳をご持参ください。
まとめ
メトトレキサートは、多くの関節リウマチ患者さんで最初に検討される、治療の中心となる薬です。
吐き気やだるさがある場合にも、フォリアミンや吐き気止めの調整、飲み方の見直し、週1回の自己注射であるメトジェクトなどの方法があります。
メトトレキサートを使用しにくい場合には、別の抗リウマチ薬や生物学的製剤を含めて治療を組み直すことができます。
メトトレキサートだけで効果不十分な場合にも、次の治療があります。
メトトレキサートを我慢して続けるか、治療を諦めるかの二択ではありません。
患者さんが続けられる方法で、関節の炎症をしっかり抑える治療を一緒に考えていきます。
浅井 昭雅(医師・博士(医学)・日本リウマチ学会認定リウマチ専門医・指導医・日本腎臓学会認定腎臓専門医)




