サラゾスルファピリジン(アザルフィジン)~関節リウマチの大事なお薬~|長久手クリニック 内科・腎臓内科・リウマチ科
目次
サラゾスルファピリジン(アザルフィジン)とは?
サラゾスルファピリジン(アザルフィジン)は、関節リウマチの治療に使われる抗リウマチ薬の一つです。
比較的古くから使用されてきた薬ですが、長年の経験の中で「免疫を抑えすぎず、じんわり効く薬」として支持されてきました。
長久手クリニックでの使用例
長久手クリニックでも、以下のような関節リウマチの患者さんに対してサラゾスルファピリジンを選択することがあります
・腎機能や肺が悪くメトトレキサート(MTX)が使用できず、かつ生物学的製剤は費用面で難しい方
>>>メトトレキサートについてはこちらをご参照ください<<<
・高齢の方
・作用の強い免疫抑制薬や治療負荷の高い薬剤に対して不安のある方(できるだけ副作用の少ない治療を希望される方)
・関節リウマチの超早期
※発作の間隔がだんだん短くなってきており、生活に支障が出ているような回帰性リウマチ様のケースでは、イグラチモド(ケアラム)を優先的に使用しています。
ニューモシスチス肺炎との関係
2025年5月に開催された第98回日本整形外科学会学術総会において、名古屋大学の佐藤良先生から、サラゾスルファピリジン(アザルフィジン)の併用により関節リウマチに合併するニューモシスチス肺炎の発症リスクを低減できる可能性があるとの発表がありました。
(出典:日経メディカル|RAに合併するニューモシスチス肺炎、サラゾスルファピリジンでリスク低減の報告)
ニューモシスチス肺炎とは、免疫が低下している人がかかりやすい肺の感染症で、原因は「ニューモシスチス・イロベチイ」というカビ(真菌)です。
HIV感染症の患者さんや、ステロイド・免疫抑制薬を使っている方に起こりやすく、関節リウマチで治療中の方も注意が必要な感染症のひとつです。
この発表では、ニューモシスチス肺炎のリスク因子として以下が挙げられています:
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)の合併・メトトレキサート(MTX)の使用
・生物学的製剤(bDMARDs)やJAK阻害薬(tsDMARDs)の使用
・グルココルチコイド(ステロイド)を1日10mg以上使用している場合
リウマチの専門医のあいだでは、以前から「サラゾスルファピリジンにはニューモシスチス肺炎の予防効果があるのではないか」と経験的に教わってきましたが、今回の発表でその実感が少し裏付けられた形になっています。
そのため長久手クリニックでは、関節リウマチの活動性がある程度コントロールされていても、ニューモシスチス肺炎のリスクが高いと判断される患者さんでは、あえてサラゾスルファピリジンを残すこともあります。
長久手クリニックが考えるサラゾスルファピリジン(アザルフィジン)の注意点・副作用
サラゾスルファピリジン(アザルフィジン)は、関節リウマチの治療薬として長く使われてきた、効果と安全性のバランスに優れたお薬です。
しかし、どのような薬でも副作用は一定の割合で起こり得ます。
長久手クリニックでは、以下の点に特に注意しながら使用しています。
■ 錠剤が大きい
サラゾスルファピリジンは粒が大きいため、飲みにくさを感じる方がいます。嚥下が難しい方や、薬を複数服用している方には慎重に対応しています。
■ 重篤な皮疹(薬疹)のリスクがあります
皮疹は、内服を始めてすぐではなく、2〜4週間後に出ることが多いため注意が必要です。
患者さんご自身も、「アザルフィジンを飲み始めてからだいぶ経つから、皮疹の原因は他にあるのでは」と感じてしまい、中止が遅れることがございます。
そのため、治療開始時には患者さんに対して、「皮疹が出たら必ず中止すること。すぐではなく2週間ほど経ってから出ることもあります」という点を繰り返しご説明しています。
■ 肝機能障害・血液異常
肝機能や白血球などの異常が起こることもあります。まれに黄疸、肝炎、劇症肝炎、肝不全に至るケースも報告されています。
そのため、長久手クリニックでは肝機能を含む血液検査を定期的に行い、副作用の早期発見と安全性の確保に努めています。
記載者:日本リウマチ学会認定リウマチ専門医・指導医 浅井昭雅