乾癬性関節炎の次の治療薬は?生物学的製剤のアダリムマブBS・IL-17・IL-23阻害薬の選び方と費用
「アダリムマブBSを使っているけれど、皮膚やかかとの症状が残る」
「最初は良かったのに、また関節が腫れてきた」
「次の生物学的製剤は、何を基準に選べばよいのだろう」
乾癬性関節炎には、TNF阻害薬(アダリムマブBS、ヒュミラなど)、IL-17系統(コセンティクス、トルツ、ルミセフ、ビンゼレックスなど)、IL-23系統(トレムフィア、スキリージなど)といった、炎症を抑える仕組みの異なる薬があります。
正直にいうと、どれが一番良い薬なのかを、一つに決めることは難しい病気です。関節が良くなっても、かかとや皮膚が残ることもあります。そして薬を変えるとなると、費用も大きく変わります。
今回は少し踏み込んで、アダリムマブBSの次の選択肢、2026年に報告された990人の研究、3割負担の薬剤費を考えてみます。
まず病気の症状を整理したい方は、「乾癬性関節炎とは?6つの症状と治療薬の選び方」を先にお読みください。この記事は、すでに治療中の方に向けた応用編です。
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長久手クリニックでアダリムマブBSを最初の候補にする理由
長久手クリニックでは、乾癬性関節炎に対して生物学的製剤が必要になった場合、TNFを抑えるアダリムマブBSを最初の候補として考えることが多いです。
理由は大きく二つあります。関節炎だけでなく、付着部炎、腰や背中の炎症、皮膚や爪など、複数の領域に効果が期待できること。そして、バイオシミラー(BS)があり、薬剤費を比較的抑えられることです。
ただし、全員に最初から同じ薬をすすめるわけではありません。皮膚症状が非常に強い方や、眼・腸などに別の病気がある方では、最初から別の薬を選んだ方がよい場合もあります。
また、アダリムマブBSで手足の関節は良くなったのに、かかとの痛みや皮膚症状が残ることもあります。最初はよく効いていたのに、後から効果が不十分になることもあります。
そのとき、単純に「アダリムマブBSは効かなかった。次は高い薬に変えよう」と考えるのではなく、まず何が良くなって、何が残っているのかを整理したいと思います。
3種類の生物学的製剤を比較した990人の研究
2026年10月28日、乾癬性関節炎の治療薬について、興味深い研究が発表されました。
乾癬性関節炎には、次のように炎症を抑える仕組みが異なる薬があります。
では、どの薬が一番よく効くのでしょうか?
この研究では、実際に治療を受けた990人の患者さんを調べました。
患者さんによって病気の状態などが違うため、その違いをできるだけ調整して比較しています。
※括弧内の商品名は代表例であり、研究でそれぞれの商品が個別に比較されたという意味ではありません。
研究でわかったこと
まず、3種類の薬は、いずれも6か月間で関節の症状を改善させました。
そして、どの薬がより効果的だったのかを比較したところ、3種類の薬の間に、はっきりとした差は確認できませんでした。
また、治療開始から半年後も同じ薬を使っていた患者さんについて、その後どのくらい薬を続けられたかも調べました。
こちらも、3種類の薬の間に、はっきりとした差は見つかりませんでした。
では、どの薬を使っても同じなのでしょうか?
私は、そう単純ではないと思います。
まず、「はっきりとした差が見つからなかった」ことと、「どの薬も同じ効果がある」ことは違います。
今回の研究は、実際の診療記録をもとに比較したものです。患者さんごとの違いをできるだけ調整していますが、すべての条件をそろえられるわけではありません。
さらに、この研究で主に調べているのは、手足の関節の症状です。
乾癬性関節炎では、関節だけでなく、皮膚や爪、腱の付け根、腰や背中にも炎症が起こります。
関節によく効く薬が、皮膚や腰の症状にも同じようによく効くとは限りません。
また、薬を長く続けられたかどうかの比較は、最初の半年間に薬をやめた患者さんを除いた結果です。この研究だけで、どの薬が一番安全なのかも判断できません。
そして、もう一つ注意したい点があります。
この研究は、アダリムマブBSが効かなかった患者さんに、次はどの薬を使うべきかを調べた研究ではありません。
そのため、この結果だけで「アダリムマブBSが効かなかったら、次はIL-17系統(コセンティクス、トルツなど)がよい」と決めることはできません。
私がこの研究を紹介したいのは、乾癬性関節炎の治療では、薬の種類だけでなく、患者さんのどの症状を良くしたいのかが大切だと考えているからです。
手足の関節が痛いのか、かかとの痛みが残っているのか、腰が痛いのか、それとも皮膚の症状が強いのか。
その違いを確認することが、次の薬を選ぶための出発点になります。
アダリムマブBSで効果が不十分なとき、次の薬はどう選ぶ?
まず、残っている痛みが本当に乾癬性関節炎の炎症によるものかを確認します。例えば肘やかかとの痛みは、付着部炎だけでなく、仕事や運動による負担でも起こります。炎症が原因でなければ、生物学的製剤を変更しても良くならないことがあります。
炎症が残っていると判断した場合には、次のように症状を分けて考えます。
現在の薬の効き方や治療歴を確認します。同じTNF阻害薬(アダリムマブBS、ヒュミラなど)の中で変更する方法も、IL-17系統(コセンティクス、トルツなど)やIL-23系統(トレムフィア、スキリージなど)といった作用の異なる薬へ変更する方法もあります。
IL-17系統(コセンティクス、トルツ、ルミセフ、ビンゼレックスなど)やIL-23系統(トレムフィア、スキリージなど)の薬を優先して考える場合があります。関節だけでなく皮膚の改善を重視し、必要に応じて皮膚科と連携します。
軸性病変が確認される場合は、TNF阻害薬(アダリムマブBS、ヒュミラなど)やIL-17系統(コセンティクス、トルツなど)を検討します。
目や腸の病気にも合った薬を選びます。ぶどう膜炎では抗TNFモノクローナル抗体が候補になります。活動性の炎症性腸疾患がある場合、IL-17系統(コセンティクス、トルツ、ルミセフ、ビンゼレックスなど)は避けています。
内服のJAK阻害薬も治療選択肢になりますが、感染症や心血管系のリスクなどを含めて安全性を検討する必要があります。また、生物学的製剤を切り替える際には、感染症、これまでの副作用や治療歴、注射の頻度も確認します。
TNF阻害薬(アダリムマブBSなど)が効かなければ必ずIL-17系統(コセンティクスなど)、その次はIL-23系統(トレムフィアなど)という決まった順番ではありません。同じ病名でも、残っている症状によって治療の優先順位は変わります。
3割負担で、1か月の薬剤費はどのくらい違う?
そして、もう一つ無視できないのが費用です。
乾癬性関節炎は長く治療を続けることもある病気です。どんなに優れた薬であっても、費用が負担になって継続が難しくなるのであれば、その点も治療を始める前に考えたいと思います。
以下は2026年4月1日適用の薬価をもとに、代表的な製剤・用量の維持投与について、4週間(28日)分の薬剤費だけを3割負担で計算した金額です。
| 製剤名・作用機序 | 維持投与の計算条件 | 4週間の3割負担 |
|---|---|---|
| アダリムマブBS「MA」 TNF阻害薬 |
40mgペン、2週間ごとに1本 | 約10,532円 |
| IL-17系統(コセンティクス) IL-17Aを抑える薬 |
300mgペン、4週間ごとに1本 | 約41,475円 |
| IL-17系統(ルミセフ) 炎症物質が働く受容体を抑える薬 |
210mgペン、2週間ごとに1本 | 約44,105円 |
| IL-17系統(トルツ) IL-17Aを抑える薬 |
80mgオートインジェクター、4週間ごとに1本 | 約44,686円 |
| IL-17系統(ビンゼレックス) IL-17AとIL-17Fを抑える薬 |
160mgオートインジェクター、4週間ごとに1本 | 約47,046円 |
| IL-23系統(スキリージ) IL-23を抑える薬 |
150mgペン、12週間ごとに1本を4週間平均 | 約47,476円 |
| IL-23系統(トレムフィア) IL-23を抑える薬 |
100mgシリンジ、8週間ごとに1本を4週間平均 | 約48,756円 |
※アダリムマブBS「MA」は17,554円×2本×30%=10,532.4円。コセンティクス300mgは138,249円×30%=41,474.7円です。ほかの製剤も同様に薬価×投与本数×30%で算出し、8~12週間隔の薬は4週間平均に換算して四捨五入しています。
※コセンティクスは150mgを選択する場合もあり、その場合は150mgペン1本で約21,441円/4週間です。掲載した薬剤・規格・用量は比較例で、すべての患者さんの投与量を示すものではありません。
上表は薬剤費のみです。診察、検査、調剤、自己注射に関する管理料などは含めていません。また、開始時には維持投与と投与量や回数が異なる薬があります。例えば乾癬性関節炎に対するアダリムマブは、通常初回80mg、その後40mgを2週間ごとに使用します。
8週間隔・12週間隔の薬は、薬を受け取る月に支払いが集中します。例えばスキリージ150mgペンは、1回分の薬剤費だけで3割負担約142,428円です。表の47,476円はあくまで4週間あたりに割り戻した平均額です。
高額療養費制度によって実際の自己負担額が軽減される場合があります。年齢、所得、処方や受診の状況などで変わるため、上表がそのまま窓口負担になるわけではありません。
アダリムマブBSと比べると、ここに挙げたIL-17系統(コセンティクス、トルツ、ルミセフ、ビンゼレックスなど)やIL-23系統(トレムフィア、スキリージなど)の薬は、条件によって薬剤費が大きく異なります。ただし、費用が高い薬ほど効果が高い、という意味ではありません。
まとめ|治療効果と費用を、両方考えたい
当院では、症状や安全性の面で適している方には、まずアダリムマブBSを候補にすることが多いです。比較的広い症状に対応でき、バイオシミラーによって費用も抑えられるためです。
しかし、それで十分に良くならない場合には、無理に同じ薬を続けることが正解とは限りません。
「手足の関節は良くなったけれど、皮膚が残っている」「かかとの痛みだけが続く」「腰の炎症が中心になってきた」。こうした違いを整理してから、次の治療を考えます。
2026年の990人の研究からも、薬のグループだけで一律に優劣を決めることは難しいと感じます。そして現実には、月々の薬剤費の違いもかなり大きいものです。
一番高い薬を選ぶことでも、一番安い薬を選ぶことでもなく、その方の症状に合い、長く続けられる治療を選ぶこと。それが乾癬性関節炎の治療では大切だと思います。
関節、腱の付け根、指全体、腰・背中、皮膚・爪に分けて、現在の治療で何が改善し、何が残っているのかを確認します。お薬手帳、これまでの治療歴、皮膚科での治療内容が分かるものがあればお持ちください。
皮膚症状だけで関節症状がない場合は、皮膚科での診療が中心です。目や腸の炎症などがある場合は、それぞれの専門科との連携が必要になります。
リウマチ・膠原病外来の診療予約乾癬性関節炎の症状と治療効果についてのご相談浅井 昭雅(医師・博士(医学)・日本リウマチ学会認定リウマチ専門医・指導医・日本腎臓学会認定腎臓専門医)





