乾癬性関節炎とは?6つの症状と治療薬の選び方|長久手市・日進市の長久手クリニック

長久手クリニックのリウマチ科が開設されて1年が経過しました。
この間、関節炎の症状でお悩みの方が、長久手市を中心に、日進市・名古屋市名東区・瀬戸市・尾張旭市・東郷町などからもご相談に来られています。
そんな中で、
・リウマトイド因子や抗CCP抗体が陰性(いわゆるセロネガティブ)にもかかわらず、関節の痛みや腫れが続く方・血縁に乾癬のある方で、自分にも関節症状が出てきた方
・すでに乾癬と診断されていて、関節のこわばりや違和感を感じている方
など、乾癬性関節炎が疑われる患者さんのご相談が徐々に増えています。
乾癬というご病気で悩まれている患者さんは多いかと思います。
実はこの乾癬、皮膚だけでなく「関節」にも炎症が及ぶことがあり、「乾癬性関節炎(Psoriatic Arthritis, PsA)」という診断がつくことがあります。
乾癬性関節炎は関節リウマチと似た症状が出る一方で、血液検査ではリウマチ因子が陰性(セロネガティブ)であることが多く、早期には診断がしにくい病気でもあります。
フィンランドの研究によれば、セロネガティブ関節リウマチと診断された患者さんのうち約10.6%が、後に乾癬性関節炎と再分類されていたという報告があります(Paalanen K, 2019)。
つまり、はじめは関節リウマチと診断されていた方でも、乾癬が遅れて出現し、診断が変わることがあるのです。
また、日本のデータによれば、乾癬性関節炎患者さんのうち約73%は皮膚症状が先に出ますが、11%は関節症状が皮膚症状より先に出るとされており、皮膚症状が出ないこともあります(Ohara Y, 2015)。
乾癬性関節炎の6つの主な症状(6ドメイン)とは?
- 末梢関節炎
指や手首、ひざなどの関節が腫れて痛みます。リウマチに似た症状が出ることもあります。 - 軸性病変
背骨や骨盤の関節に炎症が起き、腰の痛みや背中のこわばりが続きます。朝に強く出るのが特徴です。 - 指趾炎
指や足の指が、根元から全体的に腫れてソーセージのようになります。 - 腱・靱帯付着部炎
アキレス腱や足の裏、ひじなど、腱や靱帯が骨につく部分に痛みが出ます。 - 皮膚の乾癬
ひじ・ひざ・頭皮などに、赤くて白いカサカサした発疹が出ます。かゆみがあることもあります。 - 爪の乾癬
爪に小さなへこみができたり、厚くなったり、黄色く変色したりします。
6ドメインを知ることの重要性
乾癬性関節炎は、人によって症状の出る部位が異なります。
それぞれの症状に合った治療薬の選択が重要です。
医師はこの6ドメインを確認し、最適な治療方針を考えます。
乾癬性関節炎に対する生物学的製剤・JAK阻害薬の選択
乾癬性関節炎の治療にはさまざまなタイプの薬剤があり、それぞれの特徴と適応が異なります。
従来のメトトレキサート(リウマトレックス)で効果が不十分な場合でも、生物学的製剤やJAK阻害薬によって改善が期待できます。
主な治療薬の特徴
・TNF阻害薬(例:アダリムマブBS)・6つのドメインすべてに効果あり
・最も長い使用実績
・中等度〜重度の皮膚症状、炎症性腸疾患、ぶどう膜炎にも対応可
・費用が比較的抑えやすい
・IL-17阻害薬
・重度の皮膚症状、長期効果あり
・軸性病変には効果が期待できない
・TNF阻害薬に比べ費用が高め
・IL-12/23阻害薬
・重度の皮膚症状、長期効果あり
・注射回数が少ない点が特徴
・軸性病変には効果が乏しい
・IL-23阻害薬
・重度の皮膚症状、長期効果あり
・軸性病変には不向き
・JAK阻害薬
・内服薬であり注射が不要
・6ドメインすべてに効果が期待できるが、副作用や使用条件に注意が必要
長久手クリニックでは、効果と費用のバランスを考え、アダリムマブBS(バイオシミラー)を主に使用しています。
自己注射で通院の負担軽減
アダリムマブBSは2週間に一回のご自宅での自己注射が可能な薬剤です。
初回は看護師が丁寧に注射方法をご案内し、慣れるまでサポートいたします。
参考院内ブログ:>>>関節リウマチへの生物学的製剤(バイオ)の自己注射<<<
費用について
アダリムマブBS(を導入された際の追加の費用負担についてです。
在宅自己注射指導管理料(当院での指導・日々の消毒用アルコール・破棄などの費用への費用負担)と薬価(院外の薬局への純粋な薬価)で、3割負担の方であれば1か月あたり約13,000円ほどの追加となります(2025年6月時点の保険点数・薬価に基づく概算)。
治療は、症状・生活スタイルに合わせて一緒に考えていきますので、安心してご相談ください。
乾癬性関節炎が気になる方へ
皮膚の乾癬が気になっていた方、最近関節の痛みや腫れを感じる方は、乾癬性関節炎の可能性もあります。
関節破壊を防ぎ、皆様の快適な生活につながることが長久手クリニックの願いです。
長久手クリニックは、長久手市、日進市、名古屋市名東区、瀬戸市、尾張旭市、東郷町など、近隣地域からのアクセスが良好で、地域の皆さまの関節リウマチ・乾癬性関節炎治療を専門医がサポートしています。
この記事の執筆
長久手クリニック
日本リウマチ学会認定リウマチ専門医・指導医
浅井昭雅・浅井奈央