乾癬性関節炎とは?6つの症状と治療薬の選び方|長久手クリニック
乾癬に「体のあちこちが痛い」「全身が痛い」が合併することを知っていますか?
乾癬に合併する乾癬性関節炎では、関節そのものだけでなく、腱の付け根、指全体、腰やお尻、皮膚や爪に症状が出ます。
だからこそ、いろいろな痛みが重なり、「体のあちこちが痛い」と感じやすく、診察では「全身が痛い」という表現になりやすい病気です。
だから、こうした症状はご自身でも説明しづらく、我々医師にとっても診断が難しい病気になります。
まず、ご自身の症状を分解できることを知りましょう。
「ここは関節」「ここは付着部」というように分けて考えることは、治療の理解にもつながります。
乾癬性関節炎の治療は、すべての症状を一気に良くすることが難しい場合があります。
まず、ご自身の症状を分解して、「変わらない点や悪くなった点」だけを見て「効果がない」と決めつけるのではなく、「改善した点」にも前向きに気づくことが大切です。
この記事は、前半の「症状編」と後半の「治療編」に分けました。
まず症状を5つに整理し、その後、メトトレキサートで治療中の方に向けて、「どこには効いていて、どこには効きにくいのか」を説明します。
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こんな症状はありませんか?
乾癬性関節炎の診察では、「全身が痛い」という表現になりやすいですが、どこに、どのような症状が出ているのかを分けて考えます。
次の5つの症状に分けると整理しやすいと思います。
指、手首、肘、膝、足首など、関節そのものに炎症が起こります。
痛みだけでなく、見た目に腫れる、曲げにくい、朝にこわばるという形で現れることがあります。
腱や靱帯が骨につく部分の炎症を付着部炎といいます。
肘、アキレス腱、かかと、足の裏、膝の周囲などに痛みが出ます。
手や足の指が、一つの関節だけではなく一本全体として腫れる症状を指趾炎といいます。「ソーセージ指」と表現されることもあります。
背骨や仙腸関節に炎症が起こる軸性病変です。夜間や明け方に痛い、朝にこわばる、休んでいても良くならず、動くと少し楽になるという形で現れることがあります。
頭皮、肘、膝などの赤いカサつき、爪の小さなへこみ、爪が浮く、厚くなるといった症状です。関節症状と同じ時期に悪化するとは限りません。
乾癬性関節炎とは?
乾癬という皮膚の病気をお持ちの方の中には、皮膚だけでなく、関節や腱の付け根、背骨などにも炎症が起こる方がいます。これが乾癬性関節炎(Psoriatic Arthritis:PsA)です。
乾癬性関節炎は関節リウマチと似た症状を起こしますが、リウマトイド因子(RF)や抗CCP抗体が陰性のことが多いです。
採血が陰性であっても、関節や付着部に炎症がないとは限りません。
「リウマチ」と言われた方のなかに隠れていることがあります
当初は血清反応陰性の関節炎と考えられていた患者さんを10年間追跡したフィンランドの研究では、435人中46人、約11%が後に乾癬性関節炎へ再分類されていました。
多くの方は皮膚の乾癬が先に現れますが、関節症状が先に出る方もいます。また、頭皮、耳の周囲、へそ、臀部など、患者さん自身から見えにくい場所に皮疹があることもあります。
現在の皮疹だけではなく、以前に皮膚科で乾癬といわれたことがないか、爪に変化がないか、ご家族に乾癬の方がいないかを確認することがあります。
医学的には「6つの症状(6ドメイン)」に分けます
治療指針では、乾癬性関節炎を次の6つの領域(ドメイン)に分けて評価します。
医学的には皮膚乾癬と爪乾癬を分けるため6領域になります。
一方、患者さんが診察前や治療中に振り返るときは、皮膚と爪を一枚にまとめた5つのカードとして整理しています。
自分には、どの領域の症状があるのかを把握することが大切です。
ここまでは「症状編」でした。
ここからは、すでに乾癬性関節炎と診断され、メトトレキサートなどで治療中の方に向けた「治療編」です。
乾癬性関節炎では、一つの薬が、関節、付着部、指趾炎、軸性病変、皮膚、爪のすべてに同じように効くとは限りません。治療中は、「どの症状が良くなり、どの症状が残っているのか」を分けて考えます。
メトトレキサートが効く症状、残りやすい症状
「メトトレキサートを飲んでいるのに、肘やかかとがまだ痛い」
「手の腫れは良くなったけれど、腰の痛みは変わらない」
「全部良くなっていないので、メトトレキサートが効いていないのではないか」
全部の症状が良くなっていないからといって、メトトレキサートがまったく効いていないとは限りません。
乾癬性関節炎では、薬が効いている領域と、十分に効いていない領域が分かれることがあります。
メトトレキサートは、主に手足の関節炎を考えて使います
手足の関節が腫れる末梢関節炎が治療の中心である場合、メトトレキサートから治療を始めることがあります。
皮膚症状も治療上重視する場合には、関節と皮膚の両方を考えて選ぶことがあります。
一方、明らかな付着部炎や背骨、仙腸関節の軸性病変は、メトトレキサートだけでは十分に改善しにくいことがあります。
特に軸性病変は、手足の関節炎とは別に評価して治療を考える必要があります。
関節の腫れ、朝のこわばり、動かしにくさがどう変わったかを確認します。
良くなる患者さんもいますが、症状の強さや病態によって効果には差があります。
肘、かかと、足の裏、腰、背中などの症状は、メトトレキサートだけでは十分に改善しないことがあります。
各薬剤がどのような症状に効くかを考える
診察では、症状を5つの領域に分け、メトトレキサートとアダリムマブBS「MA」が、それぞれどの症状に効果を期待しやすいかを確認しています。
4週間分の薬剤費も、3割負担の目安として掲載しています。
例えば、次のようなことが起こります。
メトトレキサートを始めて、指や手首の腫れは良くなった。朝のこわばりも短くなった。
しかし、肘の痛みやかかとの痛み、明け方の腰痛は残っている。
この場合は、薬が全体として効いていないのではなく、関節には効いているけれど、付着部炎や軸性病変には十分に効いていないと考えた方が分かりやすいことがあります。
薬が効いたかを、5つの症状に分けて確認します
「薬は効きましたか」と聞かれると、患者さんは、残っている一番つらい症状を思い浮かべて「効いていません」と答えることがあります。
しかし、治療を考えるときには、全体を一つにまとめず、次のように分けて確認する方が役立ちます。
例えば、「関節の腫れは良くなったが、肘とかかとは変わらない」と分かれば、現在の薬がどこに効いていて、何が治療課題として残っているのかを整理できます。
診察では、痛みの強さだけでなく、腫れ、動かしにくさ、朝のこわばり、夜間痛、皮膚、爪の変化を確認します。症状が出たり消えたりする場合は、スマートフォンで写真を撮っておくと診察の参考になります。
症状が残るときの治療薬の選び方
症状が残っているからといって、必ずすぐにメトトレキサートを中止、変更するわけではありません。
まず、その症状が乾癬性関節炎の炎症によるものなのか、使いすぎ、変形、筋肉への負担など別の原因によるものなのかを確認します。そのうえで、現在の薬で改善した領域と、まだ治療目標に届いていない領域を整理します。
次の治療は、残っている領域に合わせて考えます
メトトレキサートなどの従来型抗リウマチ薬で治療目標に届いているかを確認します。不十分な場合には、生物学的製剤など次の治療を検討します。
付着部の炎症がはっきりしており、症状が続く場合には、付着部炎に効果が期待できる生物学的製剤などを検討します。
メトトレキサートとは別の治療が必要になることがあります。症状、画像所見、安全性などを確認し、生物学的製剤を中心に検討します。
関節への効果だけでなく、皮膚、爪への効果も考えて薬を選びます。皮膚科での治療内容を確認し、必要に応じて連携します。
乾癬性関節炎に使う生物学的製剤には、TNF阻害薬、IL-17阻害薬、IL-23関連の薬などがあります。どの領域の症状が残っているか、これまでの治療歴や患者さんごとの安全性を踏まえて選びます。
当院でも、末梢関節炎だけでなく、付着部炎、軸性病変、皮膚、爪の症状を広く治療する必要がある場合には、TNF阻害薬のアダリムマブBSなどを候補にすることがあります。ただし、全員に同じ薬を最初から選ぶわけではありません。
乾癬性関節炎の治療は長く続けることが多いため、薬が症状に合うことに加えて、費用も大切です。
アダリムマブBS「MA」は、40mgを2週間ごとに使用した場合、4週間分の薬剤費を3割負担で単純計算すると約1万500円です。
正直にいうと、他の機序の代表的な薬はどれもかなり高額です。4週間分の薬剤費を3割負担で単純計算すると、コセンティクス(IL-17Aを抑える薬)は約4万1,000円、ルミセフ(IL-17が作用する受容体を抑える薬)は約4万4,000円、トルツ(IL-17Aを抑える薬)は約4万5,000円、ビンゼレックス(IL-17AとIL-17Fの両方を抑える薬)は約4万7,000円です。
そのため当院では、TNF阻害薬が症状に合う患者さんでは、効果や安全性だけでなく、長く続けやすい費用かどうかも含めて、アダリムマブBS「MA」を治療の中心となる候補として考えることがあります。
もちろん、皮膚症状、付着部炎、腰や背中の症状など、どの領域が強いのかによっては、他の機序の薬が適している場合もあります。
感染症のリスク、年齢、これまでの治療歴、皮膚症状、ほかの病気、注射への抵抗感、通院方法、費用などを患者さんと確認しながら選びます。
一つの薬で全領域が同じように改善するとは限りません。現在最も困っている症状、将来の関節障害を防ぐ必要性、皮膚症状、生活への影響を合わせて、治療の優先順位を考えます。
このような方は、乾癬性関節炎についてご相談ください
皮膚症状だけで関節症状がない場合は、まず皮膚科での治療が中心となります。すでに皮膚科へ通院している方は、皮膚科のお薬が分かるものやお薬手帳をご持参ください。
腰、背中、仙腸関節の炎症が疑われる場合には、当院で症状と診察所見を確認したうえで、MRIなどの精密検査が可能な医療機関へご紹介することがあります。
関節、付着部、指趾炎、腰、背中、皮膚、爪に分けて、症状と現在の治療効果を確認します。お薬手帳、これまでの検査結果、皮膚科での治療内容が分かるものがあればご持参ください。
リウマチ、膠原病外来の診療予約 乾癬性関節炎、関節の腫れ、付着部炎、指趾炎、腰、背中の症状の相談まとめ
乾癬性関節炎は、関節だけの病気ではありません。手足の関節、腱の付け根、指全体、腰や背中、皮膚、爪という複数の領域に症状が出ます。
症状編では、まず自分にどの領域の症状があるのかを整理します。治療編では、薬がどの領域に効いて、どの領域が残っているのかを確認します。
メトトレキサートを使って、手足の関節は良くなったけれど、肘、かかと、腰の症状が残ることがあります。これは、薬がまったく効いていないのではなく、関節には効いているけれど、別の領域には十分に効いていないということがあります。
「効いた、効かなかった」の二択ではなく、何に効いて、何が残っているのかを一緒に整理することが、次の治療を考えるための出発点です。
浅井 昭雅(医師、博士(医学)、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、指導医、日本腎臓学会認定腎臓専門医)




