リウマチ性多発筋痛症(PMR)の治療|ステロイドはいつまで?減量方法・再燃・新しい治療薬|長久手クリニック
「飲み始めたら驚くほど楽になった。もうステロイドをやめてもいいんじゃないの? いつまで飲むの?」
リウマチ性多発筋痛症(PMR)は、ステロイドが驚くほど効きます。よくなったからこそ、時間をかけて減らしていく必要性に納得しにくい病気でもあります。リウマチ性多発筋痛症(PMR)と診断されたばかりで、ステロイドを飲み始めて3週間くらいの方は、皆さんそう思われるでしょう。
また、糖尿病などがあり「ステロイドを長期間使用したくない。ステロイド以外に治療法はないのか?」と考える方や、「ステロイドを7mg未満までなかなか減らせない。減らすと再発する」と悩んでいる方もいるでしょう。そのような方に、海外ではどのような治療が行われているのかもご説明します。
2026年10月14日に、英国リウマチ学会(British Society for Rheumatology:BSR)の2026年版ガイドラインが公表されました。また、2026年7月21日には、欧州リウマチ学会連合(European Alliance of Associations for Rheumatology:EULAR)の2025年推奨が公表されています。
そこで今回は、この2つの海外のガイドラインを参考に、リウマチ性多発筋痛症(PMR)の治療について記載します。
まず、海外のガイドラインでどのような治療が推奨されているのか、ステロイド以外の方法も説明します。そのあと、日本で使用できる薬や保険制度の違いも踏まえ、長久手クリニックでは実際にどのように治療しているのか、当院での診療経験も交えてお話しします。
リウマチ性多発筋痛症(PMR)の症状や診断、似た病気との違いについては、リウマチ性多発筋痛症(PMR)とは?症状・治療と似た病気との違いで詳しく説明しています。
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海外の最新ガイドラインでは、どのような治療が推奨されているのでしょうか
英国リウマチ学会(BSR)と欧州リウマチ学会連合(EULAR)の推奨について、まずステロイドの開始量を比べてみます。
どちらも海外で得られた研究結果に基づく推奨です。体格や持病、使用できる薬、保険制度などには、日本の診療と異なる部分があります。
長久手クリニックでは、プレドニゾロン15mgを朝1回から始めます
当院では、症状や診察所見からリウマチ性多発筋痛症(PMR)が強く疑われ、治療が必要と判断した場合、原則としてプレドニゾロン15mg(5mg錠を3錠)を朝に1回内服していただきます。
当院の15mg開始は、英国リウマチ学会(BSR)の推奨範囲に含まれます。海外の数値を日本人向けに一律に変更するのではなく、患者さんごとに調整しています。
必要な血液検査を行い、症状によっては院内CTも検討します。ただし、検査結果が当日にすべてそろうわけではありません。関節エコーでは主に手指や手首の滑膜炎・腱鞘炎を確認し、高齢発症関節リウマチ(EORA)やRS3PE症候群の可能性も念頭に置きます。
症状と診察所見、必要な検査を踏まえてリウマチ性多発筋痛症(PMR)が強く疑われる場合、プレドニゾロン15mg/日で治療を開始します。結果がそろった時点で診断も再評価します。
4日目を目安に再診し、血液検査や必要に応じて撮影した院内CTの結果を説明します。痛みや朝のこわばり、寝返り、起き上がり、着替えがどのくらい楽になったかを確認します。長期間、免疫を抑える治療が必要になりそうな場合には、結核、B型肝炎、C型肝炎などの感染症の検査も行います。
症状や炎症反応が落ち着いていれば、当院ではプレドニゾロンを10mg/日まで減量することを基本にしています。
10mg以降は1mg単位で減らしていきます。次に減らす時期は患者さんによって異なり、痛みの戻り方、CRPなどの炎症反応、副作用や持病を踏まえて決めます。
治療開始直後は短い間隔で安全性を確認し、その後も症状が安定するまでは、おおむね2週間ごとを目安に経過をみています。受診間隔は患者さんごとに調整します。
ステロイドは何日で効くのでしょうか
典型的なリウマチ性多発筋痛症(PMR)では、ステロイドを飲み始めて早ければ翌日から数日以内に、両肩や腰の痛み、朝のこわばりが大きく改善することがあります。
「うそのように楽になりました」
「もうほとんど痛くありません」
初診時には寝返りや起き上がりも大変だった方が、次の診察でこのように話されることもあります。
ただし、「ステロイドが劇的に効いたからリウマチ性多発筋痛症(PMR)」と、それだけで病名を確定することはできません。 高齢発症関節リウマチ(EORA)などでも改善する場合があるため、手指・手首・足趾の関節炎、むくみ、その後の経過も確認していきます。
十分に改善しない場合や、発熱・全身状態の悪化がある場合は、感染症など別の病気が隠れていないかを考え、治療方針を見直します。4日目前後の再診を大切にしている理由の一つです。
リウマチ性多発筋痛症(PMR)のステロイドは、いつまで飲むのでしょうか
「痛みがなくなったのだから、もうやめられませんか」と聞かれることがあります。
ただ、リウマチ性多発筋痛症(PMR)は痛みが消えても、急にステロイドを中止すると再燃することがあります。治療が順調なら少しずつ減らし、再燃しない量を確認していきます。
英国リウマチ学会(BSR)の2026年ガイドラインでは、病勢が十分に落ち着いたら10mgまで2.5mgずつ2~4週ごとに減らし、その後は1mgずつ4~8週ごとに減らす方法が提案されています。これは一般的な目安であり、当院のすべての患者さんに同じ日程を適用するわけではありません。
なお、プレドニゾロンが5~7.5mg/日を下回る頃に再燃が起こりやすいとする総説もあります。減量を続けても、なかなか7mg未満にできずに悩む方が多いのではないでしょうか。
実際の再燃の割合については、2021年公表のメタ解析で、7研究・計384人をまとめた結果、治療開始から1年後までに43%が少なくとも1回再燃していました。また、日本の89人を対象とした研究(2020年)では、5年時点の累積再燃率は約48%と推計され、初回再燃時のプレドニゾロンは平均5.0mg/日でした。研究ごとに対象や追跡期間は異なります。これらの割合は「5~7.5mg/日未満に減らした人だけの再燃率」ではありません。
リウマチ性多発筋痛症(PMR)の経過が順調であれば、1年から1年半ほどかけてステロイドを減らしていきます。教科書的には、2年頃までに半数程度の方がステロイドを中止できると考えられます。私自身の診療上の感覚では、1年から1年半で中止まで進められる方は3割程度です。
欧州リウマチ学会連合(EULAR)の2025年推奨では1年以内の中止を目標としていますが、実際には時間が必要な方もいます。目標の数字に合わせて無理に減らさず、症状を抑えながら必要最小限の量を目指すことが大切です。
当院では、症状とCRPだけでなく、糖尿病、腎機能障害、肝機能障害、感染症のリスク、患者さんが気にされている副作用も考えて、内科医として減量速度を調整します。この先に必要となる治療を予測しながら、全身の状態を含めて経過をみていきます。
ステロイドを減らして痛みが戻ったら、再燃なのでしょうか
減量中に、両肩、腰、臀部の痛み(痛みというより「重さ」と表現される方が多いです)や朝のこわばりが戻る場合には、リウマチ性多発筋痛症(PMR)の再燃を考えます。ただし、痛みが戻ったからといって、すべてが再燃とは限りません。
特に、ステロイドの減量中に手指や手首、足趾の関節炎がはっきりしてきた場合には、高齢発症関節リウマチ(EORA)の可能性を改めて考えます。また、経過が典型的でない場合や、体重減少・原因不明の全身症状がある場合には、癌(悪性腫瘍)が隠れていないか、必要に応じて改めて検索します。
英国リウマチ学会(BSR)の2026年ガイドラインでは、リウマチ性多発筋痛症(PMR)の再燃と判断した場合、最後に症状を十分抑えられていたステロイド量へ戻し、2~4週間ほど経過をみたうえで、減量速度を見直すことが推奨されています。
当院では、再燃時にステロイドを増量する際、1.5倍を目安にすることが多いです。その後は減量速度をさらにゆっくりにします。例えば、1か月ごとに1mgずつ減らしていたのを、2か月ごとに1mgずつ減らすなどです。
当院では、症状の出方、炎症反応、手足の関節所見を確認し、単にステロイドを戻すだけでよいのか、診断や検査を見直すべきかを考えます。
ステロイドを増やすべきかどうかは、痛みの経過、関節の所見、炎症反応などを確認して判断します。
どのような方で、ステロイドを早く減らす治療を考えるのでしょうか
リウマチ性多発筋痛症(PMR)はご高齢の方に多く、長くステロイドを使うこと自体が負担になる場合もあります。
当院で特に気にしているのは、例えば糖尿病があり、ステロイドによる血糖値の上昇が心配な方です。また、ムーンフェイス(顔が丸くなる副作用)を強く気にされる方もいらっしゃいます。
それ以外にも、むくみ、不眠、血圧の変化、感染症への心配など、患者さんによって困る副作用は異なります。
このような方では、症状や炎症反応が落ち着いていることを確認したうえで、ステロイドの減量速度を調整したり、追加治療を考えたりする場合があります。ただし、「副作用が心配だから、一律に急いで減らす」ことはしません。 再燃すれば、かえってステロイドが長引くこともあるためです。
英国リウマチ学会(BSR)の2026年ガイドラインでも、ステロイドの副作用リスクが高い患者さんでは、病勢が落ち着いた後に、通常より速い減量を検討する考え方が示されています。
では、ステロイドを長期間使えない方には、どのような薬を使うのでしょうか
リウマチ性多発筋痛症(PMR)の治療は、今もステロイドが中心です。ただ、再燃を繰り返す方やステロイドを十分に減らせない方を対象に、ほかの薬を併用してステロイドの使用量を減らす治療が研究されています。
IL-6受容体阻害薬:サリルマブとトシリズマブ
IL-6は炎症に関係する物質の一つです。サリルマブ(ケブザラ)とトシリズマブ(アクテムラ)は、IL-6受容体を標的として炎症を抑える薬です。
リウマチ性多発筋痛症(PMR)を対象とした臨床試験では、どちらにもステロイドの使用量を減らす効果が示されています。欧州リウマチ学会連合(EULAR)の2025年推奨では、再燃・難治性の場合にはサリルマブを優先し、トシリズマブも選択肢としています。英国リウマチ学会(BSR)の2026年ガイドラインでも、ステロイドへの反応が不十分な場合や減量が難しい場合に、IL-6受容体阻害薬の併用を検討することが提案されています。
ステロイドを長く続けることが難しい場合、海外の研究では、こうしたIL-6受容体阻害薬が治療選択肢として注目されています。ただし、日本でリウマチ性多発筋痛症(PMR)単独に保険適用があるという意味ではありません。
メトトレキサートについて、日本ではどう考えるのでしょうか
英国リウマチ学会(BSR)の2026年ガイドラインでは、新たに診断された方でもメトトレキサートの追加を検討する考え方が示されています。ただし、この推奨の根拠を補強した海外の臨床試験では、メトトレキサートを週25mg使用しています。
日本では、関節リウマチに対して承認されているメトトレキサートの投与量は週16mgまでです。以前の海外試験には週7.5~10mgで効果を報告したものもあるため、少ない量が無効という意味ではありませんが、週25mgで得られた結果を、そのまま日本の治療に当てはめることはできません。 また、日本ではメトトレキサートもリウマチ性多発筋痛症(PMR)単独に対する承認適応がありません。
このため、当院の治療説明では「ステロイドを減らしたい場合は、まずメトトレキサートを使用する」と単純には考えません。海外のIL-6受容体阻害薬の研究結果も踏まえつつ、患者さんの状態と日本の承認・保険制度を分けて考える必要があります。
2026年10月現在、日本ではサリルマブ・トシリズマブともに、リウマチ性多発筋痛症(PMR)単独に対する承認適応はありません。 また、メトトレキサートにも同様の注意が必要です。
関節リウマチに対する保険診療でも、確かな診断と、それまでの治療歴、各薬剤の適応条件の確認が必要です。海外の論文で有効とされていることだけで、国内の保険診療として使用できるわけではありません。
IL-6受容体阻害薬を使用する場合は、感染症があってもCRPが上昇しにくくなることがあるため、採血の数値だけではなく、発熱や体調の変化なども確認します。
サリルマブとトシリズマブの違い・4週間あたりの薬剤費
どちらもIL-6受容体を抑える薬ですが、海外でのリウマチ性多発筋痛症(PMR)に対する承認状況、使用経験、投与方法には違いがあります。
サリルマブ(ケブザラ)は海外でリウマチ性多発筋痛症(PMR)への承認があります。トシリズマブ(アクテムラ)は国内での関節リウマチなどへの使用経験が豊富で、皮下注射と点滴の選択肢があります。ただし、リウマチ性多発筋痛症(PMR)に対してトシリズマブの方が優れていると結論づけられる直接比較試験はありません。
当院にはトシリズマブの使用経験もありますが、どちらの薬剤についても、実際の診断、国内承認、保険適用、投与方法などを確認して判断します。
2026年4月の薬価に基づくシリンジ製剤の計算例です。「4週間で何本使用するか」を併記しています。
表示している金額は、各薬剤を保険適用の条件を満たして使用する場合の薬剤費相当額です。診察料・検査料・管理料などは含みません。高額療養費制度などにより、実際の自己負担額が変わる場合があります。
リウマチ性多発筋痛症(PMR)単独への使用が日本で保険適用となることを示すものではありません。 投与間隔は疾患や治療条件によって異なります。リウマチ性多発筋痛症(PMR)の臨床試験では、トシリズマブを週1回使用した報告もあり、2週間に1回の例と必要本数・薬剤費が異なります。
まとめ:リウマチ性多発筋痛症(PMR)は、効いたあとにどう減らすかが大切です
リウマチ性多発筋痛症(PMR)では、ステロイドの開始後に驚くほど楽になることがあります。ただ、そこで治療が終わるわけではありません。
当院では原則プレドニゾロン15mgを朝1回から始め、4日目を目安に再診して検査結果と効果を確認します。順調なら約1か月後に10mg、その後は1mgずつ減らしていきます。
糖尿病がある方、ムーンフェイスなどの副作用を強く気にされる方、再燃を繰り返す方では、治療の選び方が変わることがあります。海外ではステロイドを減らすための追加治療が進んでいますが、日本の保険適用とは分けて考える必要があります。
痛みを抑えることに加え、内科医としてこの先に必要となる治療を予測しながら、全身の状態も含めて経過をみていきます。
他院で治療中の方は、これまでのステロイド量の推移、採血結果、お薬手帳があると診察の参考になります。
この記事は2026年10月時点で確認できる文献・薬価に基づく患者さん向けの説明です。国外の推奨と当院の診療方針は区別して記載しています。実際の治療、薬の適応、投与量、減量速度、検査は診察結果によって異なります。
浅井 昭雅(医師・博士(医学)・日本リウマチ学会認定リウマチ専門医・指導医・日本腎臓学会認定腎臓専門医)





