リウマチ性多発筋痛症(PMR)とは?症状・治療と似た病気との違い|長久手クリニック
「庭仕事の翌朝から動けないほど痛い。1週間、2週間たっても治らない」
それは、単なる筋肉痛ではないことがあります。
「昨日、庭いじりを少し頑張っただけなのに、翌朝から肩と腰が痛くて起き上がれない」
「風呂掃除をしたあとから、全身の筋肉痛のような痛みが続いている」
「畑仕事の翌日から、太ももや腰がこわばって歩き出しにくい」
外来では、このように、作業のあとに痛くなったので最初は筋肉痛だと思っていたものの、いくら時間がたっても治らない、リハビリをしてもよくならない、レントゲンでは問題ない、という形で相談される方が少なくありません。
2週間以上たっても痛みが軽くならない、朝のこわばりが強い、両肩や太ももまで痛い、寝返りや起き上がりがつらい、CRPなど炎症の数値が高い場合には、リウマチ性多発筋痛症(PMR)を考えることがあります。
ただし、高齢発症関節リウマチ(EORA)、偽痛風などの結晶性関節炎、RS3PE症候群(RS3PE)などが、リウマチ性多発筋痛症(PMR)とよく似た症状で始まることもあります。
最初の診察だけで病名を完全に見分けられない場合もあります。まずリウマチ性多発筋痛症(PMR)として治療を始めながら、ステロイドへの反応や、減量していく途中の経過まで確認することが大切です。
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細かな検査や治療内容は患者さんごとに異なりますが、リウマチ性多発筋痛症(PMR)が疑われる場合、当院ではおおむね次のように診断と治療を進めています。
初診時にすべての病気を完全に区別できるとは限りません。まずリウマチ性多発筋痛症(PMR)として治療を開始しながら、高齢発症関節リウマチ(EORA)やRS3PE症候群(RS3PE)の可能性も念頭に置き、その後の反応や経過を確認します。
※下記の疾患名を押すと、それぞれの詳しい説明へ移動します。
両肩や腰、臀部、太ももの痛み、朝のこわばり、症状が始まった経過を確認します。また、手指や足趾の関節炎、手の甲や足の甲のむくみがないかを診察で確認し、主に手指や手首の関節エコーで滑膜炎や腱鞘炎がないかをみていきます。
症状や診察所見からリウマチ性多発筋痛症(PMR)がもっとも考えやすい場合には、まずリウマチ性多発筋痛症(PMR)として治療を開始します。
ただし、手指や足趾の関節炎が目立つ場合には、高齢発症関節リウマチ(EORA)の可能性を念頭に置きながら経過をみます。
両手や両足の甲に押すとへこむむくみがあり、手指や手首の関節エコーで強い腱鞘炎がみられる場合には、RS3PE症候群(RS3PE)の可能性も念頭に置きます。
初診時には完全に区別できないこともあります。そのため、治療後も手足の関節炎やむくみが残らないか、ステロイドを減らしたときにどの症状が現れるかを確認しながら、必要に応じて診断を見直していきます。
初診時に必要な血液検査を行い、症状や診察所見に応じて院内CTを撮影します。
血液検査や院内CTの結果は、当日にはすべてそろいません。症状と診察所見からリウマチ性多発筋痛症(PMR)が疑われ、手指や手首などの関節エコー所見も確認したうえで、多くの場合、1日あたりプレドニゾロン15mg(5mg錠を3錠)で治療を開始します。
血液検査や、撮影した場合には院内CTの結果を説明し、リウマチ性多発筋痛症(PMR)として矛盾がないか、ほかの病気が隠れていないかを確認します。
同時に、プレドニゾロンを開始してから、痛み、朝のこわばり、寝返り、起き上がり、着替えなどの日常動作がどの程度改善したかを確認します。
症状が悪化した場合には、感染症など別の病気の可能性を考え、ステロイド治療の継続が適切かを見直します。
症状、CRPなどの炎症反応、ステロイドの副作用を確認しながら、少しずつ減量します。
ステロイドを減らしたときに、手指、手首、足趾などの関節炎が明らかになる場合には、高齢発症関節リウマチ(EORA)の可能性を改めて考えます。
高齢発症関節リウマチ(EORA)と判断した場合には、メトトレキサートやアクテムラ(トシリズマブ)などの関節リウマチ(RA)治療を併用し、関節炎を抑えながらステロイドを減らしていきます。
リウマチ性多発筋痛症(PMR)では、症状がよくなってもステロイドを急に中止しません。
再燃に注意しながら、1年から1年半ほどかけて少しずつ減量していきます。中止までにさらに時間が必要な方もいます。
両手や両足の圧痕性浮腫と強い腱鞘炎がみられる場合には、癌(悪性腫瘍)との関連が知られているRS3PE症候群(RS3PE)を疑い、院内CTで悪性腫瘍を示唆する所見がないかを確認します。
CTだけでは確認できない悪性腫瘍もあるため、市や町から案内される年齢・性別に応じたがん検診も強く推奨します。
リウマチ性多発筋痛症(PMR)とは
リウマチ性多発筋痛症(PMR)は、肩、首、腰、臀部、太ももなど、体の中心に近い部分に強い痛みやこわばりを起こす炎症性の病気です。
50歳以上、特に65歳以上の方に多く、比較的急に症状が始まります。「いつ頃から痛くなった」と、発症時期を比較的はっきり覚えている方も少なくありません。
「筋痛症」という名前ですが、筋肉そのものが壊れる病気というより、肩や股関節の周囲に炎症が起こり、痛みや動かしにくさが現れる病気と考えられています。
リウマチ性多発筋痛症(PMR)でよくみられる症状ときっかけ
患者さんの話を聞くと、「庭仕事のあと」「風呂掃除のあと」「農作業のあと」など、はっきりしたきっかけがあるように感じられることがあります。
そのため、最初は筋肉痛だと思われやすい病気です。
しかし、庭仕事や掃除などの作業そのものが、リウマチ性多発筋痛症(PMR)の直接の原因とは限りません。
体の中ですでに始まっていた炎症が、作業後の痛みとして目立ち、そこで初めて気づかれることがあります。
外来でよく聞く症状
通常の筋肉痛であれば、日ごとに少しずつ軽くなることが多いと思います。
一方、リウマチ性多発筋痛症(PMR)では、数日たっても軽くならない、むしろ徐々に悪化する、朝が特につらい、肩だけでなく腰や太ももも痛む、といった経過になります。
リウマチ性多発筋痛症(PMR)の診断と鑑別診断
リウマチ性多発筋痛症(PMR)の症状は、リウマチ性多発筋痛症(PMR)だけに現れるものではありません。
高齢発症関節リウマチ(EORA)、偽痛風などの結晶性関節炎、RS3PE症候群(RS3PE)、感染症、悪性腫瘍などでも、急な痛み、発熱、だるさ、炎症反応の上昇が起こることがあります。
そのため、リウマチ性多発筋痛症(PMR)には、「この検査が陽性なら確定」という一つの検査はありません。
年齢、症状の出方、朝のこわばり、血液検査、手指や手首などの関節エコー、必要に応じた院内CT、ステロイドへの反応、その後の経過を組み合わせて判断します。
CRPが高いだけではリウマチ性多発筋痛症(PMR)と決められません
CRPは、体の中で炎症が起きているときに上昇する血液検査です。
リウマチ性多発筋痛症(PMR)ではCRPが高くなることがありますが、感染症、高齢発症関節リウマチ(EORA)、偽痛風、血管炎、悪性腫瘍などでも上昇します。
CRPの数値だけで、リウマチ性多発筋痛症(PMR)と診断することはできません。
高齢発症関節リウマチ(EORA)とリウマチ性多発筋痛症(PMR)は、どう見分けるのでしょうか
高齢の方に突然、両肩の痛みや強い朝のこわばりが現れた場合には、リウマチ性多発筋痛症(PMR)を考えます。
しかし、実際の診療では、リウマチ性多発筋痛症(PMR)とよく似た症状で発症する高齢発症関節リウマチ(EORA)があります。
最初の診察だけで、リウマチ性多発筋痛症(PMR)と高齢発症関節リウマチ(EORA)を完全に見分けることは簡単ではありません。
高齢発症関節リウマチ(EORA)は大きな関節から始まることがあります
一般的な関節リウマチ(RA)では、手首、手指、足趾などの比較的小さな関節に腫れや痛みが現れることが多く、リウマトイド因子(RF)や抗環状シトルリン化ペプチド抗体(抗CCP抗体)も診断の参考になります。
ところが、高齢発症関節リウマチ(EORA)では、比較的急に発症し、肩や股関節などの大きな関節を中心に症状が現れることがあります。
CRPなどの炎症反応が大きく上昇し、リウマチ性多発筋痛症(PMR)のように見えることもあります。
さらに、高齢発症関節リウマチ(EORA)には、リウマトイド因子(RF)や抗環状シトルリン化ペプチド抗体(抗CCP抗体)が陰性となる血清反応陰性例もあります。
「リウマトイド因子(RF)が陰性だから関節リウマチ(RA)ではない」
「肩や腰が痛いからリウマチ性多発筋痛症(PMR)である」
とは判断できません。
リウマチ性多発筋痛症(PMR)でも末梢関節炎がみられることがあります
リウマチ性多発筋痛症(PMR)でも、膝や手関節などの末梢関節炎を伴うことがあります。
そのため、手首や膝が腫れているというだけで、直ちに関節リウマチ(RA)と判断することはできません。
一方、手指や足趾などの末梢小関節に明らかな滑膜炎がある場合には、高齢発症関節リウマチ(EORA)を疑います。
特に、手首に加えて、指の付け根や指の第2関節に滑膜炎が続く場合は、高齢発症関節リウマチ(EORA)を考える重要な手掛かりになります。
足趾を含む複数の末梢関節に腫れが続く場合も、関節リウマチ(RA)など別の病気を考えます。
手指・手首の関節エコーと骨びらんも確認します
関節エコーでは、主に手指や手首の滑膜炎、腱鞘炎を確認します。
レントゲンなどで骨びらんが認められる場合には、関節リウマチ(RA)を疑う重要な所見になります。
ただし、発症早期には骨びらんが認められないこともあります。骨びらんがないという理由だけで、関節リウマチ(RA)を否定することはできません。
リウマトイド因子(RF)、抗環状シトルリン化ペプチド抗体(抗CCP抗体)、骨びらん、関節エコー所見を一つずつ見るのではなく、末梢関節炎の部位と程度、その後の経過を組み合わせて判断します。
ステロイドへの反応も手掛かりになります
典型的なリウマチ性多発筋痛症(PMR)では、ステロイドを開始すると、早ければ翌日から数日以内に、痛みやこわばりが大きく改善します。
診察室に入ってくるのも大変だった方が、次の診察では、
「うそのように楽になりました」
「もうほとんど痛くありません」
と話されることも珍しくありません。
リウマチ性多発筋痛症(PMR)は、ステロイドがかなり劇的に効く病気です。
一方、高齢発症関節リウマチ(EORA)でもステロイドは効きますが、全体としてはよくなっても、手足の関節炎や痛みが一部残ることがあります。
これは研究上の一定した割合や診断基準ではなく、私自身の診療上の感覚ですが、高齢発症関節リウマチ(EORA)の場合には、ステロイドを使っても、体感として3割ほど症状が残るような改善の仕方をすることがあります。
また、ステロイドを減らしたときに、手指や手首の関節炎が再びはっきりしてくることもあります。
ただし、全員が同じ反応をするわけではありません。
「ステロイドが劇的に効いたからリウマチ性多発筋痛症(PMR)」と、それだけで断定することはできません。
大切なのは「今の病名」だけでなく「今後の経過」です
患者さんから、
「私は関節リウマチ(RA)、特に高齢発症関節リウマチ(EORA)ですか。それともリウマチ性多発筋痛症(PMR)ですか」
と聞かれることがあります。
典型的な場合は初診時から判断できますが、血清反応陰性の高齢発症関節リウマチ(EORA)とリウマチ性多発筋痛症(PMR)は、最初には区別できないことがあります。
その場合には、曖昧なまま放置するのではなく、次の点を確認しながら診断を更新していきます。
重要なのは、初診時に病名を急いで決めることだけではありません。
ステロイドを中止できる可能性があるリウマチ性多発筋痛症(PMR)なのか、関節炎が持続して抗リウマチ薬が必要となる高齢発症関節リウマチ(EORA)なのかを、治療への反応とその後の経過をみながら判断していきます。
偽痛風・クラウンデンス症候群とリウマチ性多発筋痛症(PMR)の違い
高齢の方の急な関節痛や肩、首の痛みでは、ピロリン酸カルシウム結晶が沈着する偽痛風などの結晶性関節炎も考えます。
結晶性関節炎でも、発熱、強い痛み、CRPの上昇が起こり、リウマチ性多発筋痛症(PMR)とよく似ることがあります。
当院では、症状や痛む部位に応じて院内CTを撮影し、関節周囲や頸椎周囲に結晶沈着を示唆する石灰化がないかを確認します。
必要に応じて、レントゲンなどの所見も合わせて判断します。
首の強い痛みではクラウンデンス症候群も考えます
首の上の方に結晶が沈着するクラウンデンス症候群は、発熱、強い首の痛み、炎症反応の上昇を起こします。
首や肩の痛みが目立つため、リウマチ性多発筋痛症(PMR)と似て見えることがあります。
クラウンデンス症候群が疑われる場合には、当院で院内CTを撮影し、頸椎の歯突起周囲に結晶沈着を示唆する石灰化がないかを確認します。
CTで確認できるのは、主に結晶沈着を示唆する石灰化です。CTで石灰化がみられない場合でも、症状やほかの検査結果を含めて判断します。
RS3PE症候群(RS3PE)とリウマチ性多発筋痛症(PMR)はよく似ています
高齢の方に、急に複数の関節の痛みや腫れが現れ、両手や両足の甲に、指で押すとへこみが残るようなむくみを伴う場合には、RS3PE症候群(RS3PE)を考えます。
RS3PE症候群(RS3PE)は、高齢者に多く、急性発症の多関節炎と、両手・両足の甲の圧痕性浮腫を主な特徴とする病気です。
リウマチ性多発筋痛症(PMR)も、高齢者に急に発症し、強い痛み、こわばり、炎症反応の上昇が現れ、ステロイドによく反応します。
そのため、リウマチ性多発筋痛症(PMR)として治療を開始したあとに、手足の所見や経過からRS3PE症候群(RS3PE)の可能性がより明らかになることもあります。
手足のむくみを診察し、手指・手首を関節エコーで確認します
RS3PE症候群(RS3PE)では、手の甲や足の甲が左右対称に腫れます。
むくんだ部分を指で押すと、しばらくへこみが残る圧痕性浮腫が特徴です。
当院では、手指、手首、手の甲、足の甲などの腫れを診察で確認し、主に手指や手首の関節エコーで滑膜炎や腱鞘炎がないかを詳しくみていきます。
特に、両手や両足の圧痕性浮腫に加えて、手指や手首の関節エコーで強い腱鞘炎がみられる場合には、RS3PE症候群(RS3PE)を強く疑います。
ただし、腱鞘炎は高齢発症関節リウマチ(EORA)などでもみられます。
関節エコーだけで病名を決めるのではなく、むくみの状態、血液検査、ステロイドへの反応、その後の経過を合わせて判断します。
RS3PE症候群(RS3PE)では悪性腫瘍の検索が必要です
両手・両足の圧痕性浮腫があり、手指や手首の関節エコーで強い腱鞘炎を認める場合には、RS3PE症候群(RS3PE)を疑い、悪性腫瘍が隠れていないかを特に慎重に確認します。
RS3PE症候群(RS3PE)は、腫瘍随伴症候群として発症することがあります。
そのため当院では、RS3PE症候群(RS3PE)が疑われる場合には、症状や血液検査の結果を確認したうえで、悪性腫瘍を示唆する所見がないかを調べるために院内CTを撮影します。
ただし、CTにも限界があります。CTを撮影して異常がなかったとしても、すべての悪性腫瘍を否定できるわけではありません。
そのため、院内CTによる確認だけで終わらせず、年齢や性別に応じて、市や町から案内されるがん検診を受けることを強く推奨しています。
市や町から届く案内、広報誌、ホームページなどを確認し、対象となるがん検診を利用するのがよいと考えています。
当院では、RS3PE症候群(RS3PE)の診断後3~5年程度は、市や町から案内される時期ごとに、対象となるがん検診を必ず受けてくださいとお伝えしています。
体重減少、食欲低下、原因不明の貧血、発熱などがある場合や、ステロイドへの反応が乏しい場合、治療後に早く再燃する場合には、通常のがん検診だけでなく、症状と検査異常に応じた追加の腫瘍検索を検討します。
通常、RS3PE症候群(RS3PE)は少量のステロイドによく反応します。
一方、悪性腫瘍を伴うRS3PE症候群(RS3PE)では、ステロイドへの反応が悪い、十分に改善しない、治療後に再燃しやすいことがあります。
リウマチ性多発筋痛症(PMR)では巨細胞性動脈炎に注意が必要です
リウマチ性多発筋痛症(PMR)では、巨細胞性動脈炎、以前は側頭動脈炎と呼ばれていた血管炎を合併することがあります。
巨細胞性動脈炎では、こめかみ周辺などの血管に炎症が起こり、視力障害につながることがあるため、通常のリウマチ性多発筋痛症(PMR)とは緊急性が異なります。
急な視力低下、一時的に見えなくなる症状、視覚異常を伴う強い頭痛がある場合は、通常のWeb予約日を待たず、救急を含む医療機関へ速やかに相談してください。
長久手クリニックで確認すること
長久手クリニックでは、症状と診察所見からリウマチ性多発筋痛症(PMR)を疑った場合には、手指や手首などに関節炎や腱鞘炎がないかを関節エコーで確認し、必要な血液検査や院内CTを進めながら治療開始を判断します。
血液検査や院内CTの結果は当日にはすべてそろいません。リウマチ性多発筋痛症(PMR)の可能性が高いと判断した場合には、多くの場合、1日あたりプレドニゾロン15mg(5mg錠を3錠)で治療を開始します。
治療開始から3~5日程度後に再診していただき、血液検査や、撮影した場合には院内CTの結果を説明し、ステロイドへの反応と合わせて診断を確認します。
リウマチ性多発筋痛症(PMR)だけでなく、高齢発症関節リウマチ(EORA)、偽痛風、クラウンデンス症候群、RS3PE症候群(RS3PE)、感染症、悪性腫瘍なども考えながら検査を進めます。
偽痛風やクラウンデンス症候群が疑われる場合には、必要に応じて院内CTを撮影し、結晶沈着を示唆する石灰化がないかを確認します。
RS3PE症候群(RS3PE)が疑われる場合には、悪性腫瘍を示唆する所見がないか確認するため、症状や検査所見に応じて院内CTを撮影します。
ただし、CTだけですべての悪性腫瘍を確認することはできないため、年齢や性別に応じた市や町のがん検診も受けることを強く推奨しています。
筋肉痛と思っていた痛みが2週間以上軽くならない方、朝のこわばりが強い方、CRP高値を指摘された方、手足の関節の腫れや圧痕性浮腫がある方は、症状、血液検査、手指や手首などの関節エコー、必要に応じた院内CTを組み合わせて確認します。
リウマチ・膠原病外来の診療予約 リウマチ性多発筋痛症(PMR)、高齢発症関節リウマチ(EORA)、RS3PE症候群(RS3PE)、関節の腫れ、CRP高値の相談リウマチ性多発筋痛症(PMR)のステロイド治療と減量の考え方
リウマチ性多発筋痛症(PMR)の治療では、主にステロイド薬を使用します。
当院では、症状と診察所見からリウマチ性多発筋痛症(PMR)が疑われる場合には、手指や手首などの関節エコーで滑膜炎や腱鞘炎の有無を確認し、高齢発症関節リウマチ(EORA)やRS3PE症候群(RS3PE)の可能性も念頭に置きます。必要な血液検査を行い、必要に応じて院内CTも進めながら、多くの場合、1日あたりプレドニゾロン15mg(5mg錠を3錠)で治療を開始します。
血液検査や院内CTの結果がすべてそろうまで治療を待つのではなく、リウマチ性多発筋痛症(PMR)の可能性と治療を開始する必要性を判断してステロイドを開始します。
治療開始から3~5日程度後に再診していただき、血液検査や、撮影した場合には院内CTの結果を説明するとともに、ステロイドへの反応を確認します。
典型的なリウマチ性多発筋痛症(PMR)では、プレドニゾロン開始後、早ければ翌日から数日以内に、痛みやこわばりが劇的に改善します。
一方、十分に改善しない場合や、検査結果がリウマチ性多発筋痛症(PMR)として合わない場合には、高齢発症関節リウマチ(EORA)、偽痛風、RS3PE症候群(RS3PE)、感染症、悪性腫瘍などを改めて考えます。
治療開始直後は2週間ごとを目安に受診していただき、症状、炎症反応、ステロイドの副作用を確認しながら少しずつ減量します。
リウマチ性多発筋痛症(PMR)のステロイド減量には時間がかかります
症状がよくなっても、ステロイドを急に中止することはできません。
リウマチ性多発筋痛症(PMR)の経過が順調であれば、1年から1年半ほどかけてステロイドを減らしていきます。教科書的には、2年頃までに半数程度の方がステロイドを中止できると考えられます。私自身の診療上の感覚では、1年から1年半で中止まで進められる方は3割程度です。残りの方も、すぐに治療がうまくいっていないという意味ではなく、再燃に注意しながら、さらに時間をかけて減らしていきます。
減量中に症状が再燃する方や、長期間にわたって少量のステロイドが必要になる方もいます。
「リウマチ性多発筋痛症(PMR)なら必ず短期間で治療が終わる」というわけではありません。
ご高齢の患者さんでは、持病やステロイドの副作用も含めて考えます
リウマチ性多発筋痛症(PMR)が疑われる患者さんの多くはご高齢で、糖尿病、骨粗鬆症、腎機能障害、肝機能障害などの持病を抱えていることも少なくありません。
そのため、現在の痛みや炎症を抑えるだけでなく、ステロイド治療による血糖値の上昇、骨折や感染症のリスク、腎機能・肝機能なども確認しながら治療を進める必要があります。
ステロイドの減量速度は、症状や炎症反応の変化だけでなく、糖尿病、骨粗鬆症、腎機能障害、肝機能障害、感染症のリスクなども踏まえ、内科医として調整します。この先に必要となる治療を予測しながら、全身の状態を含めて経過をみていきます。
減量中の経過によって診断を見直します
ステロイドを減らしたときに、手指や手首、足趾などの滑膜炎が明らかになる場合には、高齢発症関節リウマチ(EORA)ではないかを改めて検討します。
高齢発症関節リウマチ(EORA)と判断され、関節炎が持続する場合には、腎機能、肝機能、肺疾患、感染症歴なども確認しながら、メトトレキサートやアクテムラ(トシリズマブ)などの関節リウマチ(RA)治療を検討します。
関節リウマチ(RA)に適した治療を併用することで、関節炎を抑えながらステロイドを減らしていきます。
一方、両手や両足の圧痕性浮腫と強い腱鞘炎が目立つ場合には、RS3PE症候群(RS3PE)を考えます。
RS3PE症候群(RS3PE)では、ステロイドへの反応だけでなく、悪性腫瘍が隠れていないかを確認し、その後もがん検診を続けることが必要です。
まとめ・受診の目安
リウマチ性多発筋痛症(PMR)は、50歳以上、特に65歳以上の方に多く、両肩、腰、臀部、太ももなどの急な痛みと、強い朝のこわばりを起こす病気です。
庭仕事、掃除、農作業のあとに始まったように感じられることがありますが、単なる筋肉痛ではなく、すでに始まっていた炎症が作業をきっかけに目立った可能性があります。
典型的なリウマチ性多発筋痛症(PMR)では、ステロイドが劇的に効きます。
一方、高齢発症関節リウマチ(EORA)やRS3PE症候群(RS3PE)でも、リウマチ性多発筋痛症(PMR)とよく似た症状で始まり、ステロイドが効くことがあります。
そのため、最初はリウマチ性多発筋痛症(PMR)として治療を開始しながら、手足の関節炎やむくみが残らないか、ステロイドを減らしたときにどの症状が現れるかを確認していきます。
ステロイドを中止できる可能性があるリウマチ性多発筋痛症(PMR)なのか、関節炎が持続して抗リウマチ薬が必要となる高齢発症関節リウマチ(EORA)なのか、悪性腫瘍の検索を続ける必要があるRS3PE症候群(RS3PE)なのかを、治療への反応とその後の経過をみながら判断していきます。
リウマチ性多発筋痛症(PMR)が疑われる患者さんの多くはご高齢で、糖尿病、骨粗鬆症、腎機能障害、肝機能障害などを合併していることも少なくありません。
目の前の痛みや炎症だけをみるのではなく、内科医としてこの先に必要となる治療を予測しながら、全身の状態を含めて経過をみていきます。
この記事は患者さん向けの一般的な解説です。実際の診断、ステロイド治療、受診間隔、減量速度、関節リウマチ(RA)治療、悪性腫瘍の検索内容は、症状、診察所見、検査結果、持病、服用中の薬によって異なります。
浅井 昭雅(医師・博士(医学)・日本リウマチ学会認定リウマチ専門医・指導医・日本腎臓学会認定腎臓専門医)




