「確実に関節リウマチを防ぐ食事」はない?リウマチと食事の正しい向き合い方|長久手クリニック 内科・腎臓内科・リウマチ科
「RF(リウマチ因子)が陽性でも、関節の痛みはないから、今は関節リウマチではないという説明はわかりました。しかし、なにか自分でできることはないのですか?」
「『①ストレスをためない ②禁煙 ③歯周病を治す』ことが大事と言われましたが……このまま何もしないで待つのは不安です。食事などで、なんとか自分でできることはないでしょうか?」
診察の際に、「発症を防ぐための生活習慣」について不安を伺うことがよくあります。
「ストレスをためない・禁煙・歯周病の治療」は、まさに医学的に証明されたリウマチ予防の三大鉄則です。
■ あわせて読みたい当院の関連記事
リウマチの初期症状や、免疫暴走を防ぐ生活習慣について詳しく解説しています。
「RF(リウマチ因子)が陽性」と分かった段階で、「これをすれば確実に発症を防げる」という方法は、残念ながらまだ確立されていません。過度な心配は禁物です。
ただし、欧州リウマチ連盟(EULAR)は、早期の関節炎から関節リウマチへの進行を予防するために以下の3つを推奨しています。これらはRF陽性で症状がない方にとっても、健康維持のために意識してよい習慣といえます。
しかし、「それ以外にも、毎日の食事やサプリメントでなんとかしたい!」と思うのが人情ですよね。
ただ、世の中には「これが効く」「あれは食べてはいけない」といった情報が溢れており、真面目な方ほどそれに振り回されて疲れてしまう傾向があります。
ここからは、最近発表された「食事」に関する最新論文と、有名な「サプリメント」の大規模データを組み合わせながら、当院が考える「頑張りすぎない、ちょうどいい向き合い方」をお話ししたいと思います。
2025年に発表された約20万人規模の最新研究(Feng et al.)で、「EAT-Lancet(イート・ランセット)食」と呼ばれる食事スタイルが、関節リウマチの発症リスクを最大約20%低下させることが分かりました。
これは「地球環境を守りながら、人間も健康になる」ことを目的とした食事で、具体的には「全粒穀物、野菜、果物、豆類、ナッツ、魚を増やし、赤身肉や砂糖を控える」というものです。
データによると、この食事はお魚やナッツに含まれる「オメガ3脂肪酸」を血液中に増やす一方で、慢性的な炎症のサインとなる特定のタンパク質(GlycAなど)を減らしてくれます。食事がお薬のように「炎症を抑える働き」をサポートしてくれることが科学的に証明されたのです。
ここで一つ、医学的に大切な「研究の限界」についてお話しします。
実はこの研究、イギリスの大規模データを使っているため、日本人のデータは圧倒的に不足しています。「この結果が100%そのまま日本人にも当てはまる」と断言することはできません。
しかし、がっかりしないでくださいね。
この研究は同時に「食事の効果を高める特定の遺伝子」の存在を突き止めており、この「炎症を抑える働きに関わる遺伝子」そのものは、私たち日本人にもしっかり備わっています。
人種によって効き目の大きさには個人差が出るかもしれませんが、「お魚や野菜を中心とした食事が、遺伝子や代謝に良い影響を与える」という根本的なメカニズムは、日本人にも十分に期待できるものです。そして何より、この食事スタイルは昔ながらの「和食」にとても近いですよね。
お魚(オメガ3)が良いと聞くと、「じゃあ、手っ取り早くオメガ3のサプリメントを飲めば予防になるのでは?」と思うかもしれません。実はここに、医学の面白い事実があります。
2022年にアメリカで行われた「VITAL試験」という約2万5000人を対象とした超大規模な研究で、「オメガ3のサプリメントだけを毎日飲んでも、リウマチなどの自己免疫疾患の明確な予防にはならなかった」という結果が出ているのです。
「サプリがダメなのに、お魚を食べる食事が良いって矛盾してない?」と思われるかもしれませんね。
理由は、「食べ物はチームプレイで働くから」です。
食事でお魚や大豆、お野菜を摂る場合、オメガ3だけでなく、ビタミンやミネラル、食物繊維などが一緒に体に入り、相乗効果を生み出します。同時に、炎症の火種になりやすい余分な脂肪や糖分を「減らす」ことにも繋がります。
一方でサプリメントは、単一の成分だけをポンと体に入れるものです。普段の食事が乱れていれば、残念ながら焼け石に水になってしまうのです。
※ただし、例外もあります。
同じVITAL試験で、日光を浴びることで作られる「ビタミンD」のサプリメントは、自己免疫疾患の発症リスクを22%(2年以上継続で39%)も下げることが分かっています。現代人は日光不足になりがちなので、お魚や野菜メインの「食事」に加えて、不足しがちなビタミンDを「サプリ」で補うのは理にかなった選択と言えます。
「やりすぎない・折り合いをつける」重要性
論文のデータから様々なことが分かりますが、ここで長久手クリニックとして皆さんに一番お伝えしたいのは、「絶対にやりすぎないでください」ということです。
「RFが陽性だから、明日からお肉は一切禁止!」「甘いものは絶対食べない!」と極端に走ってしまうと、食事のたびに「これを食べたら発症するかも」とプレッシャーを感じます。実は、主治医の先生が仰った通り、関節リウマチにとって「精神的なストレス」こそが免疫バランスを崩す最大の敵(発症の引き金)になり得るのです。
また、遺伝子のタイプによって食事の効き目には個人差があって当然です。「あんなに食事に気をつけたのに発症してしまった」と、ご自身を責める必要は全くありません。すべてを完璧にコントロールできる魔法の食事はありません。
これくらいの「70〜80点でよしとする」という良い意味での受容(折り合いをつけること)が必要です。適度なゆとりを持って、今の自分に合格点を出していくのが、リウマチ予防や治療においてとても大切なのです。
▼ 他の症状や膠原病についても知りたい方へ
関節リウマチ・膠原病記事のまとめ|気になる症状・検査・治療|
【参照元】
浅井 昭雅 (医師 医学博士 日本リウマチ学会認定リウマチ専門医・指導医)
浅井 昭雅(あさい あきまさ) 浅井 奈央(あさい なお)
・日本リウマチ学会認定リウマチ専門医・指導医 ・日本腎臓学会認定腎臓専門医
〒480-1111 愛知県長久手市山越115番地
駐車場完備(日進市・名古屋市名東区・みよし市・尾張旭市・瀬戸市・東郷町・豊田市方面からもアクセス便利です)



