「夜間や明け方の腰痛」が「関節の痛み」のヒントかも~脊椎関節炎~|長久手クリニック 内科・腎臓内科・リウマチ科
「関節リウマチの検査(RFや抗CCP抗体)が陰性だから、リウマチではありません。レントゲンも異常なしです」
そう言われて安心したはずなのに、やっぱり指や膝など、あちこちの節々が痛い。
さらに「節々というか、筋肉?かかとも痛い」と様々に痛い。
さらに言えば、実はずっと昔から腰痛もある……。
「リウマチじゃないなら、この痛みは何?」「あちこち痛いのは、加齢や気のせい?」
そんなつらさを抱えていませんか?
実は、血液検査でリウマチの指標がマイナスでも、手足の関節に炎症が起きる病気があります。
それどころか、関節だけでなく、腱の付着部や脊椎(背骨)にまで炎症が及ぶことがあるのです。
今回は、一般的な血液検査では見つけにくく、手足の痛みと腰痛がセットで現れやすい「脊椎関節炎(せきついかんせつえん)」について、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医の立場から詳しく解説します。
「RF陰性、CCP陰性」「特徴的な腰痛」。
このテーマは、多くの患者さんが見過ごされている可能性があり、以前からお伝えしたいと考えていました。しかし、これまでは当院の記事にすることを躊躇していました。その理由は、この病気の診断が非常に難しく、当院の設備だけでは診断を完結させることができないからです。しかし、信頼できる脊椎専門の先生と地域連携することができ、他院と連携することで診断できる環境が整いましたので記載します。
「あちこち痛い」のに、説明できない辛さ
診断がつく前の脊椎関節炎の患者さんが抱える痛みは、非常に孤独で、捉えどころのないものです。
「どこが一番痛いですか?」と聞かれても、患者さん自身も答えられないことがよくあります。ある時は腰, ある時はかかと, またある時は指先と、痛みの場所が「移動」したり、日によって強さが変わったりするからです。
「節々が痛い気もするけれど、筋肉が痛いような気もする…」という曖昧な感覚や、アキレス腱など腱の付け根(付着部)の痛みなど、様々に現れます。これらが複雑に混ざり合い、痛みが痛みを呼びます。どこが病気の「炎症性の痛み」で、どこからがそれをカバーしようとして生じた「凝り固まった痛み」なのか、自分でもわからなくなってしまう。この「説明(言語化)しにくい辛さ」こそが、脊椎関節炎の大きな特徴です。
ご自身でも説明(言語化)しにくいその痛み、実は以下のような特徴的なパターンの組み合わせに分解して理解することができます。
【架空症例】様々な痛みで来院されます
指の関節や足の裏(かかと)が痛み、リウマチを心配して受診。「検査(RF, 抗CCP抗体)は陰性なので様子を見ましょう」と言われましたが、痛みは続きます。「関節というより筋肉が痛い気もするし、とにかくあちこち様々に痛いんです」と仰っていました。
詳しくお話を伺うと、「実は20代の頃から、朝起きた時に腰が重く、動くと楽になる」という自覚症状がありました。レントゲンでは異常なしとされてきた長年の腰痛が、実は脊椎の炎症によるものでした。
👉 ここがポイント
一見、手足の痛みとは無関係に思える「昔からの腰痛」こそが、診断の大きなヒントになります。脊椎関節炎は、手足の関節炎(末梢型)と腰・背中の炎症(体軸型)が混ざり合って出現するのが特徴です。
また、脊椎関節炎による腰痛は安静時や寝ている最中などに悪化するという特徴があります。普通の腰痛は動くと悪化しますが、この病気は少し動いたほうが楽になります。この「安静時に悪化する腰痛」に気づくことが、診断へ大きく近づく一歩となります。
脊椎関節炎とは?
脊椎関節炎は、脊椎(背骨)に炎症を起こす「疾患群」の総称です。
💡 「肺炎」に例えると分かりやすいかもしれません
一口に「肺炎」といっても、原因によってウイルス性や細菌性、アレルギー性などに分類されますよね。これと同じように、脊椎関節炎も原因や症状の出方によっていくつかに分類されます。
脊椎関節炎は原因によって分類されます。例えば、背骨が固まる「強直性脊椎炎」、皮膚病を伴う「乾癬性関節炎」、潰瘍性大腸炎やクローン病に伴う関節炎、感染症の後に起きる「反応性関節炎」などがあります。
脊椎関節炎の分類:体軸型と末梢型
| 分類 | 主な症状 | 代表的な疾患 |
|---|---|---|
| 体軸優位の 脊椎関節炎 |
主に背骨(脊椎)や骨盤の関節(仙腸関節)の炎症。強烈な腰背部痛。 ※炎症性腰痛が特徴 |
強直性脊椎炎(AS)など |
| 末梢優位の 脊椎関節炎 |
手足の関節炎、指全体の腫れ(指趾炎)、腱の付け根の痛み(付着部炎)。 | ・乾癬性関節炎 ・反応性関節炎 ・潰瘍性大腸炎やクローン病に伴う関節炎 |
チェックリスト:こんなサインはありませんか?
上記のチェックリストのうち、【炎症性腰痛の5つの基準】の5項目のうち4つを満たす場合、ただの腰痛ではなく「炎症による腰痛」である可能性が非常に高くなります。この問診だけで、ある程度病気を絞り込むことができるのです。
脊椎関節炎の確定診断には、MRIを用いて骨の内部の炎症(骨髄浮腫)を評価することが不可欠です。しかし、単にMRIを撮れば分かるわけではなく、脊椎関節炎特有の微細な変化を読影できる専門的な知識が必要です。
最近、地域連携を通じて信頼できる脊椎専門の先生と出会うことができました。当院で「怪しい」と判断した場合、スムーズにその専門の先生へ繋ぎ、精密な評価を受けていただける体制が整いました。
簡単に治療についてまとめます
診断がついた場合、治療薬は炎症がどこにあるかによって使い分けます。
- 手足の関節炎(末梢型):
関節リウマチにも矛盾しないため、主に関節リウマチでも使用される飲み薬「メトトレキサート」を使用します。 - 背骨の炎症(体軸型):
メトトレキサートが効きにくいため、当院では「アダリムマブBS」(2週間に1回自己注射)や、「リンヴォック」(飲み薬)を使用します。
これらは背骨の炎症だけでなく、関節の炎症に対しても非常に高い効果があります。
※当院では、患者さんの費用負担の面からアダリムマブBSを選択するケースが多いです。
詳しくは当院のブログ「乾癬性関節炎とは?6つの症状と治療薬の選び方」もご参照ください。乾癬性関節炎とは、脊椎関節炎の一種で、乾癬(皮膚の病気)を伴うのが特徴です。
このような記事を書いている当院の患者さんでも、「関節の痛み」で来院されている方の中に、この脊椎関節炎が隠れているかもしれません。それくらい診断が難しい病気です。
まだはっきりとした病名がついていない方も、経過を診ることで初めて分かることがあります。「一度診てもらったから…」と遠慮せず、いつでもお気軽にご相談ください。
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浅井 昭雅 (医師 医学博士 日本リウマチ学会認定リウマチ専門医・指導医)
長久手クリニック内科・リウマチ科・腎臓内科
浅井 昭雅(あさい あきまさ) 浅井 奈央(あさい なお)
・日本リウマチ学会認定リウマチ専門医・指導医
・日本腎臓学会認定腎臓専門医
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