皮膚科や健診などで「抗核抗体(こうかくこうたい)」を測定し、「陽性でした」と言われて不安になり、当院を受診される方が増えています。
ご不安になって検索されている皆様に、まず一番にお伝えしたいことがあります。それは、
「抗核抗体が陽性でも、必ず膠原病(こうげんびょう)というわけではありません」
ということです。
長久手クリニックは街のクリニックとして、「抗核抗体が陽性」と聞いてご不安な長久手市・日進市・名東区・瀬戸市・尾張旭市・豊田市の皆様が、必要以上に心配せず、安心して相談できる場所でありたいと考えています。
まず医師から、ご不安になっている皆様へ
高血圧であれば、血圧を下げることで将来の脳卒中などを防ぐ「一次予防」が可能です。
一方で、抗核抗体が陽性というだけで、将来の膠原病を予防する確かな方法は現時点ではありません。
(参考:免疫が暴走するとき 〜膠原病とは?膠原病の発症を防ぐには?〜)
つまり、抗核抗体が陽性と聞いても、何か特別な制限や治療を直ちに始めなければならないわけではないのです。
インターネットで検索すると「頭痛・倦怠感・発疹」など、誰にでも当てはまりそうな症状がたくさん出てきて怖くなるかもしれません。しかし、大切なのは「腎臓・肺・心臓などの臓器に障害があるかどうか」を判断することです。
当院では、採血や採尿、必要に応じてCT検査を行い、臓器への影響を確認します。もし臓器障害が見つかった場合は、重症度に応じて愛知医科大学病院などの専門機関へスムーズにご紹介いたします。まずは落ち着いて、現状を正しく把握することから始めましょう。
抗核抗体とは?
抗核抗体(ANA)は、自分の細胞の「核(DNAなどが含まれる中心部分)」にある成分に反応してしまう抗体のことです。
膠原病(自己免疫疾患)で高くなることが知られていますが、実は健康な方でも陽性になることがよくあります。
抗核抗体価(数値)の目安
抗核抗体は、健康な方でも10〜20%くらいで陽性を示すことがあります。
検査結果の用紙にある「倍率(40倍、80倍など)」を確認し、以下の目安を参考にしてください。
| 抗核抗体の力価 | 健常人での陽性率 | 当院のおすすめ対応 |
|---|---|---|
| 40倍 以上 | 20~30% | 下記のチェックリストを見て、気になる症状があればお気軽にご相談ください。 |
| 80倍 以上 | 10~12% | 症状や不安があればご相談ください。 特にHomogeneous型やPeripheral型と記載がある方は、より積極的に受診をご検討ください。 |
| 160倍 以上 | 5% | 一度、専門医へのご相談をご検討ください。 |
| 320倍 以上 | 3% | 一度、専門医へのご相談をご検討ください。 |
※参考文献:Kavanaugh A, et al. Arch Pathol Lab Med. 2000 Jan;124(1):71-81.
二次スクリーニングと染色型の特徴
抗核抗体が陽性の場合、その「染まり方(染色型)」によって、より詳しい自己抗体検査(抗DNA抗体、抗SS-A抗体など)を行います。これは「どの核物質に反応しているか」を突き止める作業です。
ただし、保険診療では測定できない物質も多いため、「抗核抗体は陽性だけど、詳しい自己抗体はすべて陰性(異常なし)」という結果になることも少なくありません。
染色型ごとの特徴
🐰 Homogeneous (均質型)・Peripheral (辺縁型)
- 全身性エリテマトーデス(SLE)と関連する「抗DNA抗体」が出ている可能性があります。
- この型が出た場合は、追加で抗DNA抗体を測定することをお勧めします。
🐰 Speckled(斑紋型)
- 斑点状に染まる型で、健康な方でも出ることがあります。
- この中には「抗DFS抗体」という、むしろ「膠原病になりにくい抗体(安心材料になる抗体)」が含まれている可能性があります。(※残念ながら現在、抗DFS抗体は保険適用の検査ではありません)
- 一方で、シェーグレン症候群や混合性結合組織病(MCTD)や全身性強皮症に関連する抗体が含まれることもあるため、専門医による判断が大切です。
膠原病を疑う症状のチェックリスト
抗核抗体が陽性でも、無症状であれば多くは経過観察で大丈夫です。ただし、以下のような症状がある場合は膠原病が隠れている可能性があります。
Ⅰ. 関節・全身の症状
- 2週間以上続く関節の痛みや腫れ
- 朝の手指のこわばりが30分以上続く
- 原因不明の微熱が続く
Ⅱ. 皮膚・粘膜の症状
- レイノー現象(寒さで指先が 白 → 紫 → 赤 と変色する)
🐰 特に重要です! 参考:寒くなったときに「指先が真っ白」になりませんか? - 日光に当たると発疹が出る(顔や手の甲など)
- 髪の毛が大量に抜ける
Ⅲ. 乾燥の症状
- 口が乾いて、水なしではパサつくものが食べにくい
- 目の乾き、ゴロゴロ感が続く
Ⅳ. 臓器に関わる症状(要注意)
- 息切れや胸の痛み
- 尿の泡立ち、手足のむくみ
- 手足の筋力低下
まとめ
- 抗核抗体陽性 = すぐに病気、ではありません。
- 数値(力価)、染まり方(染色型)、そして自覚症状を組み合わせて丁寧に判断します。
- 自己判断で怖がらず、まずは専門医にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 抗核抗体が80倍でした。受診は必要ですか?
A. 症状がなければ心配ない場合が多いですが、ご不安であれば受診をお勧めします。
「80倍」は境界線のような数値です。全く健康なこともあれば、膠原病の初期のこともあります。ネット検索で不安を募らせるより、一度検査をして「臓器に異常がない」ことを確認するだけで安心につながります。
Q2. 陽性と言われてから、生活で気をつけることはありますか?
A. 特別な制限はありません。
今まで通りの生活で大丈夫です。ただし、上記のチェックリストにあるような症状(レイノー現象や関節痛、むくみなど)が新たに出てきた場合は、早めに受診してください。
Q3. いつ再検査すればよいですか?
A. 数値や症状によりますが、目安は「数ヶ月〜半年後」です。
特にHomogeneous (均質型)やPeripheral (辺縁型)の場合は、半年に1回程度定期チェックを行い、数年単位で変化がないかを見守る(フォローする)こともあります。診察に個別にご案内します。
受診・アクセス
長久手クリニック
内科・腎臓内科・リウマチ科・膠原病外来
当院は、街のクリニックとしては珍しい日本リウマチ学会認定リウマチ専門医・指導医、日本腎臓学会認定腎臓専門医が在籍しており、膠原病や関節リウマチの初期評価から専門的な管理まで対応しています。
「抗核抗体が陽性」という結果用紙を片手に、どうしてよいかと不安な気持ちになられる患者さんのお力になれればと思っています。
医師:浅井 昭雅 / 浅井 奈央
- 〒480-1111 愛知県長久手市山越115番地
- 駐車場完備(日進・みよし・尾張旭・瀬戸・名東区方面からもアクセス便利)



