関節リウマチや膠原病へのステロイドへの不安。安全な「超低用量」とは? |長久手クリニック
こんにちは、長久手市をはじめ、日進市・尾張旭市・瀬戸市・名古屋市名東区・守山区・豊田市など、広域から関節リウマチや膠原病でお悩みの方にご来院いただいております。
日本リウマチ学会認定リウマチ専門医として、皆様の不安や痛みを解消できる身近な「街のクリニック」でありたいと思います。
今回は、関節リウマチや膠原病の治療で使われるお薬、「ステロイド(プレドニゾロン等)」について、「少量のステロイドは絶対に悪いお薬というわけではない」という少量のステロイドに対しポシティブ寄りな意見の2026年4月発表の海外論文をもとにお話ししたいと思います。
Lancet Rheumatol 2026 Published Online April 2, 2026
https://doi.org/10.1016/S2665-9913(26)00072-X
Glucocorticoid treatment in patients with inflammatory rheumatic diseases: current practice and open questions
もちろん当院では1mgでもステロイド(プレドニンやプレドニゾロン等)を減らすために生物学的製剤を含むお薬を積極的に使用しています。
しかしステロイドには優れた抗炎症作用という良い点もあります。
今回2026年4月に発表された論文は「ステロイドと上手く付き合っていく」という少しポジティブな視点を持つ珍しい内容となっています。
「減らしたいけどステロイドがなかなか減らせない…」「ステロイドの怖い副作用ばかりが頭にのこる」と悩む患者さんが、この記事を読んで少しでも「前向きに」とらえていただくきっかけになれば幸いです。
ステロイドの最新の考え方:「短期間・最小有効量」
現代のガイドライン(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、リウマチ性多発筋痛症)では、ステロイドに対する考え方が一致してきています。
関節リウマチにおけるステロイドの役割と「天井効果」
関節リウマチにおけるステロイド(プレドニン)の最も基本的な役割は、効果が出るまでに時間がかかる他の抗リウマチ薬が効き始めるまでの「つなぎの治療(ブリッジング療法)」としての短期間の使用です。欧州リウマチ学会などの主要なガイドラインでは、ステロイドは数ヶ月(通常3〜6ヶ月)以内に可能な限り早く減量し、中止することが推奨されています。
しかし、基本的には完全に中止することを目指すリウマチ性多発筋痛症とは異なり、関節リウマチでは「ごく低用量のステロイドを長期維持することが、有効かつ現実的な選択肢になり得る」という大きな特徴があります。その理由と現状は以下の通りです。
ガイドラインの推奨にもかかわらず、実際の臨床現場のデータ(レジストリデータ)では、関節リウマチ患者さんの約半数が半年以上の長期にわたってステロイドを慢性的に使用し続けていることが分かっています。
この背景には、最新の生物学的製剤や複数の抗リウマチ薬を組み合わせても、一定の割合の患者さんで症状の改善が頭打ちになってしまう「天井効果」の存在があります。
抗リウマチ薬だけでは目標とする症状のコントロール(寛解や低疾患活動性)に到達できない患者さんに対して、5mg/日未満(理想的には2〜4mg/日)のごく低用量のプレドニンを追加することは、この天井効果を突破するための合理的な戦略とされています。
ステロイドは人間のゲノム(遺伝情報)の約20%を調節するなど多面的な作用を持つため、他のお薬にはない相乗効果をもたらし、関節破壊の進行を防いだり、再燃をコントロールしたりする強力な補助となります。
関節リウマチにおいても「ステロイドをやめること」が第一の目標であることに変わりはありません。しかし、他の治療を尽くしても痛みが残ったり再燃してしまう難しいケースにおいては、「5mg未満(できれば2〜4mg)の超低用量ステロイドを他のお薬と組み合わせ、慎重なモニタリングのもとで長期的に維持する」という方法は、患者さんの生活の質を保つための非常に有効で許容できる治療戦略として認められています。
リウマチ性多発筋痛症特有の「ジレンマ」と日本の現状
リウマチ性多発筋痛症の治療においても、ガイドラインでは「1年以内の完全中止」が理想とされています。しかし、実際の臨床現場では、ステロイドを減らしていく過程で約40〜60%もの患者さんが痛みの再燃(ぶり返し)を経験するという悩ましいジレンマがあります。
減量中に何度も再燃を繰り返してしまう方や、もともと糖尿病や骨粗鬆症があって副作用リスクが高い方に対し、海外の最新ガイドラインでは「早期から他のお薬を併用して、ステロイドを減らす工夫(ステロイド・スペアリング)」が推奨されています。
海外では推奨されているこれらの併用療法ですが、現在の日本の健康保険制度では、リウマチ性多発筋痛症に対する使用(特に高価な生物学的製剤など)が広くは認められておらず、保険適応の観点から実施が難しいのが実情です。
「5mg」は許容ライン。理想のベストな着地点は「2〜4mg」
ステロイドの量について、「5mg」と「2〜4mg」ではどのような違いがあるのか、最新論文のデータをもとに分かりやすくお伝えします。
1日5mgという用量は、死亡率や重大な心血管イベント(心臓や血管の病気)、骨粗鬆症といった過剰なリスク増加とは関連しないため、どうしてもステロイドを中止できない場合の「重大な危険を回避できる許容レベル」として推奨されています。しかし完全に副作用がないわけではなく、病気の勢いを抑える一方で、有害事象(主に重篤ではない感染症など)が24%増加するというデータも示されています。
ステロイドは人間のゲノム(遺伝情報)の約20%を調節するなど、多面的で非常に強力な作用を持ちます。そのため、2〜4mgという極めて少ない量であっても顕著な治療効果を発揮し、より安全なリスクプロファイル(安全性)を保つことができます。
つまり、両者の最大の違いは「長期的な副作用リスク(累積的なダメージ)をどこまで減らせるか」という安全性の度合いの差です。
5mgは「危険を回避できる許容レベル」ですが、そこからさらに残存する感染症などの副作用リスクをできる限り減らしつつ、十分な効果を維持できるベストな着地点が「2〜4mg」となります。当院が「ステロイドは1mgでも減らしたい」とお伝えしているのは、患者さんをこの安全圏へ導きたいという強い思いがあるからです。
知っておきたい「副作用」と「炎症」のジレンマ
ここで大切なポイントがあります。実は「ステロイドの副作用(毒性)」と、病気による「コントロールされていない慢性的な炎症」は、どちらも血管や骨に同じような悪影響(心血管疾患や骨粗鬆症など)を与えてしまいます。
つまり、副作用を怖がって無理にステロイドをゼロに急ぎ、結果的に病気の「炎症」が燃え上がってしまっては本末転倒です。関節リウマチなどでどうしても痛みが取れない場合、他のお薬にごく少量のステロイドを組み合わせることで、副作用を抑えつつ、関節の機能や状態を改善できる可能性があります。「最も低いステロイド用量で、病気の炎症をできる限り抑え込むこと」が、患者さんのお体へのトータルダメージを減らすことに繋がります。
超低用量なら比較的安全とはいえ、体調の変化には十分に注意し、気になる症状があればすぐにご相談ください。
浅井 昭雅 (医師 医学博士 日本リウマチ学会認定リウマチ専門医・指導医)
長久手クリニック 内科・腎臓内科・リウマチ科
浅井 昭雅(あさい あきまさ) 浅井 奈央(あさい なお)
・日本リウマチ学会認定リウマチ専門医・指導医
・日本腎臓学会認定腎臓専門医
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「関節リウマチ・膠原病」や「腎臓・尿の異常(蛋白尿・血尿)」は専門性が高い分野です。
地域でも数少ないCT装置を完備しており、必要であれば詳細な診断が可能です。
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