痛風の激痛、正体は「結晶」です|尿酸値が正常な発作と長期治療|長久手クリニック
「風が吹くだけでも痛い」と言われる痛風。
突然、足の親指の付け根などが赤く腫れ上がり、激痛に襲われることがあります。
「痛み止めを飲んで痛みが治まったから、もう大丈夫」
「採血では尿酸値が正常だったから、痛風ではないのでは?」
実は、痛みが引いても痛風の「正体」は体の中に残ったままです。
また、痛風発作が起きている最中には、尿酸値が正常範囲になることもあります。
今回は、当院のスライド資料を使って、痛風の正体、発作時の尿酸値の見方、長期的な治療が必要な理由、そして切っても切り離せない生活習慣病との関係について解説します。
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痛風発作中でも、尿酸値が正常なことがあります
「こんなに痛いのに、採血では尿酸値が正常でした。では、痛風ではないのでしょうか?」
痛風発作が起きている最中には、血液中の尿酸値が一時的に下がっていることがあります。研究によって割合には幅がありますが、急性痛風発作の患者さん221人を調べた研究では、88人、約4割が発作中には正常尿酸値でした。
そのため、発作中の尿酸値が正常だったという理由だけで、痛風を否定することはできません。どの関節が、どのように腫れたのか。痛みがどのくらい急に始まったのか。過去にも同じ発作があったか。こうした症状の経過と診察所見を合わせて考えます。
痛風が強く疑われる場合は、発作が治まってから尿酸値をもう一度確認します。海外の診療ガイドラインでは、発作中の尿酸値が6.0mg/dL未満でも痛風が疑わしい場合、発作が治まって少なくとも2週間後に再検査することが勧められています。
痛風の正体は、関節にある「ガラスの破片」のような結晶です
痛風発作のあの激痛、原因は何だと思いますか?
正体は、血液中に溶けきれなくなった尿酸が固まってできた「尿酸塩結晶」です。
手術などで関節の中を見ると、まるで「白い粉」のようなものがびっしりと溜まっていることがあります。これを拡大すると、鋭く尖った針、まるで「ガラスの破片」のような形をしています。
実際には、結晶が物理的に関節を切っているというより、尿酸塩結晶をきっかけに免疫反応が起こり、関節の中で強い炎症が生じることで、あの耐え難い激痛が引き起こされます。イメージするだけでも痛いですよね……。
検査で見える「結晶」と「全身からのSOS」
「尿酸値が高い」と言われても、実際に体の中で何が起きているのかイメージしづらいかもしれません。当院では、診察や採血に加えて、必要に応じて関節エコーやCTを用い、痛風に関連する変化を確認します。
関節エコー(超音波)で結晶や炎症を確認します
関節エコーを当てると、骨や軟骨の表面に尿酸塩結晶が沈着していると考えられる変化が見えることがあります。また、炎症によって関節の周囲に水が溜まっている様子を確認できることもあります。
発作中の尿酸値だけでは判断しにくい場合に、症状の経過や診察所見と関節エコーを組み合わせて考えることがあります。ただし、エコーだけで必ず診断できるわけではなく、ほかの関節炎との区別が必要です。
CTで尿路結石を確認します
痛風は足だけの病気ではありません。私は「足の激痛は、全身からのSOS」と考えています。
高尿酸血症や痛風では、尿路結石を伴うことがあります。背中やわき腹の痛み、血尿などがある場合は、必要に応じてCTで結石の有無、大きさ、位置、尿の流れへの影響を確認します。
なお、CTで結石が見えても、画像だけですべての結石の成分を尿酸結石と確定できるわけではありません。結石の状態や腎機能を確認し、手術や専門的な処置が必要な場合は泌尿器科や高次医療機関へつなぎます。
痛風発作と尿酸管理から、心臓や脳のリスクを考えます
痛風発作は、足の関節だけで起きている局所的な出来事ではありません。発作中には、体の中で強い炎症反応が起きています。
2022年に発表された大規模な研究では、痛風患者さん62,574人を調べ、心筋梗塞または脳卒中を起こした方では、その直前に痛風発作を起こしていた割合が高いことが報告されました。特に痛風発作後の約4か月間は、心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントが一時的に増える関連が示されています。
また、2026年に発表された109,504人の痛風患者さんを対象とした研究では、尿酸降下薬の治療開始後12か月以内に尿酸値6.0mg/dL未満を達成したグループで、達成しなかったグループと比べて、その後5年間の心筋梗塞や脳卒中などの重大な心血管イベントが少ないという関連が認められました。相対的なリスクは9%低く、5年間のイベントなし生存率の絶対差は1.0%でした。
尿酸値5.0mg/dL未満を達成した方では、さらに大きなリスク低下との関連が示されました。ただし、これはすべての患者さんが一律に5.0mg/dL未満を目指すべきだという意味ではありません。
一般的な治療目標は尿酸値6.0mg/dL未満です。痛風結節がある方、慢性痛風性関節炎がある方、6.0mg/dL未満でも発作を繰り返す方などでは、患者さんの状態に応じて5.0mg/dL未満を検討することがあります。
これらは観察研究であり、痛風発作や尿酸値が心筋梗塞や脳卒中を直接引き起こす、あるいは尿酸値を下げれば必ず予防できると証明した研究ではありません。しかし、痛風を発作時だけ治療するのではなく、尿酸値を目標まで継続的に管理することが、関節を守るだけでなく、将来の全身リスクを考えるうえでも大切である可能性を示しています。
痛みが治まったから終わりとせず、痛風発作をきっかけに、血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、体重、腎機能などを見直す意義があります。当院では、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医が関節エコーを用いた評価や痛風発作の治療を行い、内科医として尿酸管理まで一気通貫で診療しています。
治療のゴールは「コップの底の塩」を減らすこと
「尿酸値を下げればよいなら、1回だけ薬を飲んで数値を下げれば十分」と思われるかもしれません。しかし、ここからが長久手クリニックが最も大切にしているポイントです。
痛風の痛みは「結晶をきっかけに起きる炎症の痛み」です。発作が治まっても、結晶そのものがなくなったとは限りません。
治療では、尿酸値を6.0mg/dL未満に下げるだけでなく、その状態を維持して、蓄積した結晶を少しずつ減らしていきます。結晶の量や、それまでに蓄積した期間によって差がありますが、少なくとも1〜2年単位で時間がかかることがあります。
数値が一度よくなった、痛みがなくなったという理由で、処方された薬を自己判断で中止すると、尿酸値が再び上がり、結晶が減らないまま発作を繰り返すことがあります。薬の継続や変更は、尿酸値、発作の回数、腎機能、副作用などを見ながら判断します。
尿酸値だけでなく、体重・血圧・血糖・脂質も一緒に確認します
尿酸値が高い、あるいは治療しても数値がなかなか下がらないという状態は、体からの「代謝が乱れていますよ」「内臓脂肪が蓄積していますよ」というSOSサインになっていることがあります。
ただし、痛風の方が全員太っているわけではありません。また、特定の食品だけを避ければ、すべて解決するわけでもありません。
大切なのは、患者さんごとの背景を確認することです。
薬による尿酸管理と、生活習慣の見直しは、どちらか一方を選ぶものではありません。尿酸値を目標まで下げながら、背景にある体重、血圧、血糖、脂質、腎機能を一緒に整えていくことが大切です。
このような方は当院でご相談いただけます
当院では、症状の経過、過去の尿酸値、現在のお薬、腎機能、血圧、糖尿病、脂質異常症などを確認します。
必要に応じて関節エコーを行い、尿路結石が疑われる場合にはCTで確認します。
健診結果、過去の採血結果、お薬手帳があればご持参ください。
痛風発作、発作時には正常だった尿酸値、繰り返す関節痛、高尿酸血症と腎機能・生活習慣病の関係についてご相談いただけます。
内科・腎臓内科・リウマチ科の診療予約 痛風発作、高尿酸血症、尿酸値の再確認、腎機能・生活習慣病の相談まとめ
痛風は、単なる足の痛みではありません。関節に尿酸塩結晶が蓄積し、発作が起きていない間も結晶が残っていることがあります。
また、発作中には尿酸値が正常になることがあります。採血の数字が正常だったという理由だけで痛風を否定せず、症状の経過、診察、必要に応じた関節エコーを合わせて考えることが大切です。
痛風発作後、とくに最初の4か月ほどは、心筋梗塞や脳卒中との一時的な関連が報告されています。必要以上に怖がる必要はありませんが、痛みが治まったから終わりとせず、血圧、血糖、脂質、体重、腎機能を見直すきっかけにしてほしいと思います。
治療の目標は、痛みだけを止めることではなく、尿酸値を目標まで下げて維持し、「コップの底の塩」のように溜まった結晶を少しずつ減らすことです。

長久手クリニックの基本姿勢は、痛風・高尿酸血症に関する医療従事者向け情報冊子「尿酸 NEXT Stage 2025 No.2」の施設紹介にも掲載されています。
浅井 昭雅(医師・博士(医学)・日本リウマチ学会認定リウマチ専門医・指導医・日本腎臓学会認定腎臓専門医)




