春から夏の「関節が腫れてリウマチかも?」…実は“大人のりんご病”かもしれません|長久手・日進・東郷・尾張旭・瀬戸のリウマチ専門外来

「リウマチかも?」と心配して来院された方が、実は…?
「朝、手がむくんで指が曲げにくい」「関節が赤く腫れてズキズキする」——
春から夏にかけて、こうした症状で当院を受診される女性が増えてきます。
私たちリウマチ専門医がまず念頭に置くのは、関節リウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患です。しかし、診察を進めていくうちに、「実はウイルス感染による一時的な関節炎だった」ということも少なくありません。
その代表が、「りんご病」で知られる ヒトパルボウイルスB19 の感染です。
「子どもの病気」ではない、大人の“りんご病”
「りんご病って、子どもがなるんじゃないの?」
実際、頬が赤くなる典型的な発疹が出るのは小児に多く、大人が感染しても皮膚症状は目立たないか、まったく出ないこともあります。
ところが大人が感染すると、手足の関節が腫れて強く痛むといった“膠原病のような症状”が現れることがあり、見分けがつきにくくなるのです。
小児と成人ではこんなに違う!
特徴 | 小児のりんご病 | 成人のパルボウイルス感染 |
---|---|---|
皮疹 | 頬が赤くなる(典型的) | ほとんど出ない/気づかない |
発熱 | 軽度 | 高熱になることも |
関節症状 | ほぼなし | 手指や足の関節が腫れて痛む |
全身症状 | 比較的元気 | 倦怠感・微熱が続くことも |
経過 | 数日で自然に軽快 | 1〜3週間で徐々に回復 |
診断の難しさ | 比較的容易 | 関節リウマチやSLEと見分けにくい |
「これはリウマチ?」診断を迷わせるウイルス感染
成人のパルボウイルス感染では、関節の腫れや痛みが左右対称に出現し、まるで関節リウマチの初期症状のように見えることがあります。
血液検査を行うと、リウマトイド因子や抗核抗体が一時的に陽性になったり、補体が下がる(低補体血症)こともあり、SLEに酷似するケースも。
ある小説『君は医者になれない』(午鳥志季 著)でも、若い医師がリウマチかウイルス性関節炎かを迷う描写があります。実際の臨床でも、判断がつきにくいことは珍しくありません。
ただし、決定的な違いがあります。それは、時間とともに自然に治っていくという点です。
治療はシンプル、でも見極めが大事
関節リウマチやSLEのような慢性の膠原病では、治療に免疫抑制剤やステロイドなどが必要になることもあります。一方で、パルボウイルスによる関節炎の場合は、痛み止め(例:ロキソニン)を使いながら経過をみるだけで、自然に症状が軽くなることがほとんどです。
必要以上の検査や薬を避けるためにも、「これは膠原病?それとも一過性のウイルス感染?」と冷静に見極めることがとても大切です。
当院では
保育士さんや看護師さん、小さなお子さんと関わる機会の多い方は、知らないうちにパルボウイルスに感染してしまうことがあります。
当院では、関節リウマチやSLEを専門とする医師が、ウイルス性関節炎との違いにも十分配慮しながら診療しています。
「リウマチかも?」「関節が腫れていて心配」という方は、ぜひご相談ください。
※ご注意ください
当院は内科・膠原病リウマチ専門クリニックであり、小児科の診療は行っておりません。
ヒトパルボウイルスB19の血液検査(IgM抗体)は15歳未満の方を対象としておらず、当院では小児への採血・診断は行っておりません。
15歳未満のお子さんの診断や登園・登校の可否については、小児科医へのご相談をお願いいたします。
この記事を書いた医師
本記事は、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医・指導医である浅井昭雅が記載しました。
長久手クリニックには、日本リウマチ学会認定の女性リウマチ専門医も在籍しています。
「女性同士の方が話しやすい」というご相談も多くいただいていますので、安心してご受診ください。
長久手市のほか、日進市・東郷町・尾張旭市・瀬戸市などからも多くの方が来院されています。
不安な症状があれば、どうぞお気軽にご相談ください。