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脂質異常症と腎臓の関係とは?|腎機能低下とLDLコレステロール・中性脂肪|長久手クリニック

高脂血症・高LDL血症

脂質異常症と腎臓病には関係があります。
しかし、 「腎機能が低下すると必ずコレステロールが上がる」 「脂質異常症があるから腎臓が悪くなった」と単純に考えることはできません。

eGFR、尿蛋白、LDLコレステロール、中性脂肪、糖尿病、血圧などを 合わせて確認する必要があります。

腎機能が低下している方では、脂質の数値だけを見るのではなく、 腎機能低下の進み方や尿検査の異常を確認しながら、 心筋梗塞や脳梗塞を防ぐために治療が必要かを考えます。

この記事を書いた医師
長久手クリニック 内科・腎臓内科・リウマチ科
日本リウマチ学会認定リウマチ専門医・指導医、日本腎臓学会認定腎臓専門医が、 患者さんに向けて解説します。
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この記事は、当院医師が脂質異常症と血液透析の関係について大学病院勤務時に執筆した 『血液透析診療指針』収載の「脂質異常症診療指針」をもとに、 患者さん向けに整理しています。
著者:浅井 奈央、浅井 昭雅、伊藤 恭彦
東京医学社、2021年6月
ISBN:978-4-88563-731-5

脂質異常症と腎臓はどう関係するのか

脂質異常症とは、LDLコレステロールが高い、中性脂肪が高い、 HDLコレステロールが低いなど、血液中の脂質に異常がある状態です。 自覚症状はほとんどありませんが、動脈硬化と関係します。

脂質異常症と腎臓病の関係は、一方向ではありません。

二つの方向に分けて考えます
脂質異常症や動脈硬化、高血圧、糖尿病などが、 腎臓の血管にも影響する場合
慢性腎臓病や多量の尿蛋白によって、 体内の脂質代謝が変化する場合

糖尿病、高血圧、喫煙、体重増加などは、 脂質異常症と腎機能低下の両方に関係します。 このため、LDLコレステロールが高いという結果だけを見て、 それが腎機能低下の原因だと決めることはできません。

一方で、腎機能が低下すると、血液中の脂質を処理する仕組みが変化し、 中性脂肪などが高くなることがあります。 尿蛋白が多い方では、腎臓病そのものが脂質異常症の原因となっている場合もあります。

腎機能が低下すると脂質の値は変わるのか

腎機能が低下したときの脂質異常は、 単純に「LDLコレステロールだけが高くなる」というものではありません。

中性脂肪が高くなることがあります

腎機能が低下すると、中性脂肪を多く含む粒子が血液中に残りやすくなり、 中性脂肪が高くなることがあります。

中性脂肪は食事や飲酒、血糖値の影響も受けやすいため、 腎臓病による変化だけでなく、採血前の食事、飲酒、糖尿病、 体重などを合わせて確認します。

HDLコレステロールが低くなることがあります

腎機能が低下している方では、HDLコレステロールが低くなることがあります。 また、HDLの数値だけではなく、体内での働き方が変化する可能性もあります。

そのため、HDLコレステロールの数値だけを上げるのではなく、 LDLコレステロール、中性脂肪、血圧、糖尿病などを含めて考えます。

LDLコレステロールは必ず高くなるわけではありません

腎機能が低下している方全員で、LDLコレステロールが高くなるわけではありません。 腎機能がかなり低下していても、LDLコレステロールが正常範囲内のことがあります。

一方で、尿蛋白が非常に多い病態では、 LDLコレステロールと中性脂肪の両方が大きく上昇することがあります。

尿蛋白が多い場合の脂質異常症

ネフローゼ症候群のように、尿から多くの蛋白が漏れる病態では、 LDLコレステロールや中性脂肪が大きく上昇することがあります。

尿へ蛋白が漏れると、体は不足した蛋白を補おうとして、 肝臓で蛋白を多く作る方向へ動きます。 その際に脂質も多く作られます。 さらに血液中の脂質を処理する働きも低下するため、 LDLコレステロールや中性脂肪が上昇します。

尿蛋白が多い場合は、腎臓病の確認も必要です

多量の尿蛋白が脂質上昇の背景にある場合は、 脂質の薬だけを使用すればよいとは限りません。 尿蛋白が増えている原因や腎臓病の状態を合わせて確認します。

脂質異常症と動脈硬化・腎萎縮の関係

脂質異常症がある方では、腎機能低下を認めることがあります。 ただし、脂質異常症だけが腎機能低下の直接的な原因だと 単純に説明することはできません。

LDLコレステロール高値を含む脂質異常症は、 高血圧、糖尿病、喫煙などとともに、動脈硬化を進める要因の一つです。 動脈硬化が大動脈や腎臓へ血液を送る血管に及ぶと、 腎臓への血流が低下することがあります。

脂質異常症
高血圧・糖尿病・喫煙なども関係
動脈硬化
腎臓への血流低下
腎機能低下・腎萎縮

腎臓は、多くの血液を受け取りながら働いている臓器です。 腎臓へ十分な血液が届きにくい状態が長く続くと、 腎機能が低下するだけでなく、 腎臓が本来の大きさより小さくなる「腎萎縮」に関係することがあります。

正常な腎臓と大動脈の石灰化を伴う左右の腎萎縮を比較した腹部CT画像
当院で撮影した腹部CT画像です。上段は正常な腎臓です。 下段では大動脈の壁に石灰化があり、左右の腎臓が萎縮しています。 患者さんの許可を得て、個人情報を伏せて掲載しています。
腎臓の形をCTで確認する意味を詳しく見る

このCT画像だけを見て、 「脂質異常症だけが腎萎縮を起こした」と断定することはできません。 高血圧、糖尿病、喫煙、加齢など、 動脈硬化に関係する複数の要因を合わせて考える必要があります。

一方で、採血のeGFRやクレアチニンだけでなく、 腎臓の大きさや左右差、大動脈の石灰化などを確認することで、 腎機能低下の背景を考える材料が増えます。

腎臓の形を画像で確認する意味

CTでは、腎萎縮だけでなく、腎嚢胞、腎結石、片方の腎臓しかない状態、 尿路の閉塞など、採血や尿検査だけでは分からない構造上の異常を 確認できる場合があります。

すべての方にCT検査が必要という意味ではありません。 症状、採血、尿検査、過去の経過などから、 医学的に必要と判断した場合に検討します。

腎臓の形をCTで確認する意味|血尿・腎のう胞・腎結石

腎臓病がある方に脂質治療を行う大きな目的は、 低下したeGFRを直接元へ戻すことではなく、 心筋梗塞、狭心症、脳梗塞などの心血管疾患を予防することです。

同時に、血圧、糖尿病、喫煙などの動脈硬化に関係する要因を管理し、 腎臓への血流を長期的に守ることも大切です。

LDLコレステロールと中性脂肪を分けて考える

LDLコレステロールと中性脂肪は、 同じ「脂質」という言葉でまとめられますが、 高くなる原因や治療の考え方は同じではありません。

LDLコレステロールが高い場合

LDLコレステロールが高い場合は、食生活や体質、遺伝だけでなく、 糖尿病、甲状腺機能低下症、多量の尿蛋白などが関係していないかを確認します。

腎機能が低い方でLDLコレステロールが高くても、 「腎臓が悪いから仕方がない」と決めることはできません。 腎臓病とは別の原因が重なっている場合もあります。

若い頃からLDLコレステロールが高い方へ

腎機能低下や尿蛋白がなく、 若い頃からLDLコレステロール高値を繰り返している方では、 今回の記事とは少し異なる判断が必要です。

現在の数値だけでなく、高い状態が今後も長く続くことによる影響、 家族性高コレステロール血症の可能性や家族歴などを合わせて、 薬を始めるか、生活習慣を整えながら経過を見るかを考えます。

若いのに健診でLDLコレステロールが高い、薬は必要?

中性脂肪が高い場合

中性脂肪は、食事、飲酒、糖尿病、体重増加などの影響を受けやすい一方で、 腎機能低下に伴う脂質代謝の変化によって高くなることもあります。

中性脂肪が高い場合は、空腹時の採血だったか、 飲酒や食事、糖尿病、甲状腺機能、 現在使用している薬などを確認します。

空腹時の中性脂肪が500mg/dL以上の場合

空腹時の中性脂肪が500mg/dL以上の場合は、 動脈硬化だけでなく、さらに上昇した場合の急性膵炎の危険も考える必要があります。

この場合は、生活習慣だけで長く様子を見るのではなく、 飲酒、血糖コントロール、食事内容、甲状腺機能などの原因を確認し、 積極的に治療します。

必要に応じて中性脂肪を下げる薬を検討します。 腎機能が低い方では、使用できる薬や用量に注意が必要です。

eGFR低下と尿蛋白を合わせて確認する

健康診断でeGFRが一度低かったとしても、 一度の数値だけで慢性腎臓病の重症度や進行を決めることはできません。

大切なのは、その数値が今の体の状態を正確に反映しているかを確認し、 eGFRの低下速度が速いのか、尿蛋白や血尿を伴っているのかを見ることです。

腎機能について確認すること
本当に腎機能が低下しているのか
腎機能低下の速度が速くないか
尿蛋白や血尿を伴っていないか
脱水や体調不良などによる一時的な変化ではないか
筋肉量の影響で、クレアチニンによるeGFRが 実際より低く見えていないか

クレアチニンは筋肉量の影響を受けます。 筋肉量や体格の影響が大きいと考えられる場合には、 必要に応じてシスタチンCを用いたeGFRも参考にします。

過去の健診結果や採血結果が手元にあれば参考になりますが、 何年分もの結果をすべてそろえなければ受診できないわけではありません。 確認できる過去の結果と現在の採血・尿検査を合わせ、 今後の変化も確認していきます。

健診でeGFR低下・腎機能低下と言われた方へ

長久手クリニックで考える血圧・脂質・糖尿病の目標

腎臓を守るためには、脂質だけを治療すればよいわけではありません。 血圧、脂質、糖尿病を別々に考えず、同時に管理することが大切です。

当院で基本としている目標
血圧
130/80mmHg以下
LDLコレステロール
120mg/dL未満
糖尿病のない方のHbA1c
5.6%未満
中性脂肪
空腹時150mg/dL未満
非空腹時は175mg/dL未満を目安にします

これらは、腎機能低下を指摘された方へ当院がお伝えしている基本的な目標です。 すべての患者さんへ同じ目標をそのまま当てはめるわけではありません。

心筋梗塞や脳梗塞の既往がある方、 糖尿病、尿蛋白、喫煙などが重なる方では、 LDLコレステロールを120mg/dLよりさらに低く管理することがあります。

HbA1c 5.6%未満は、糖尿病を発症していない方の予防目標です。 すでに糖尿病で治療中の方は、年齢、低血糖の危険、腎機能、 使用している薬などを踏まえて個別に目標を決めます。

生活習慣を整えても目標に届かない場合や、 もともとの心血管疾患のリスクが高い場合には、 生活習慣だけで長く様子を見るのではなく、 薬物治療を含めて積極的に管理します。

腎機能が低い方の脂質の薬

「腎臓に負担の少ない薬を選びます」という一言だけでは、 腎機能が低い方の薬剤選択を十分に説明できません。

実際には、eGFR、脂質異常の種類、現在使用している薬、 薬の用量、これまでの副作用、 糖尿病や心血管疾患の既往などを確認して選びます。

LDLコレステロールを下げる薬

LDLコレステロールを下げ、 心筋梗塞や脳梗塞などを予防する目的では、 スタチン系薬剤を中心に考えることがあります。

薬の種類によって、腎機能低下時の用量や注意事項が異なります。 併用している薬との相互作用も確認します。

中性脂肪を下げる薬

中性脂肪が高い場合は、飲酒、食事、糖尿病、体重などの原因を確認したうえで、 必要に応じて中性脂肪を下げる薬を検討します。

中性脂肪を下げる薬の中には、 腎機能に応じて用量の調整が必要なものや、 腎機能の状態によって使用できないものがあります。

特にスタチン系薬剤とフィブラート系薬剤などを併用する場合は、 筋肉の副作用や腎機能の変化に注意が必要です。

薬を服用中に確認したい症状

普段と違う強い筋肉痛、力が入りにくい感じ、 尿の色が極端に濃くなるなどの症状がある場合は、 自己判断で様子を見続けず、処方した医療機関へご連絡ください。

長久手クリニックで確認すること

当院では、脂質の数値だけを見て薬を勧めるのではなく、 腎機能、尿検査、血圧、糖尿病、 心血管疾患のリスクを合わせて確認します。

現在のクレアチニンとeGFR
確認できる範囲での腎機能の変化
尿蛋白、尿潜血・血尿
LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪
血圧、血糖値、HbA1c
必要に応じた甲状腺機能やシスタチンC
心筋梗塞・脳梗塞などの既往と家族歴
現在使用している薬、過去の副作用、筋肉症状

「コレステロールが高いと言われたけど、どうすればいいのか不安」
「腎臓にも負担をかけたくない」

そのような場合は、脂質異常症と腎機能低下を別々に考えるのではなく、 両方を合わせて確認します。

脂質異常症と腎機能低下を一緒に指摘された方へ

健診でLDLコレステロールや中性脂肪の異常に加えて、 eGFR低下、クレアチニン高値、尿蛋白などを指摘された方は、 腎臓内科で結果をご相談いただけます。

慢性腎臓病があり脂質の薬を始めるべきか迷っている方や、 腎機能が低い状態で現在の脂質治療を続けてよいか確認したい方も、 腎機能と薬の内容を合わせて確認します。

健診結果、確認できる範囲での過去の採血・尿検査結果、 お薬手帳が手元にあればご持参ください。

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まとめ

脂質異常症と腎臓病には関係がありますが、 「腎機能が低下すると必ずコレステロールが上がる」 「脂質異常症があるから腎臓が悪くなった」と 単純に考えることはできません。

腎機能が低下すると、中性脂肪が高くなったり、 HDLコレステロールの状態が変化したりすることがあります。 尿蛋白が非常に多い場合には、 LDLコレステロールと中性脂肪の両方が 大きく上昇することもあります。

脂質異常症、高血圧、糖尿病、喫煙などによる動脈硬化が進むと、 腎臓への血流が低下し、 腎機能低下や腎萎縮に関係することがあります。

腎臓病がある方の脂質治療は、 LDLコレステロールだけで判断するものではありません。 eGFR、尿蛋白、血圧、糖尿病、心血管疾患の既往、 現在使用している薬を合わせて考えます。

血圧、脂質、糖尿病を同時に管理し、 必要な場合は薬物治療を含めて積極的に治療することが大切です。 特に空腹時中性脂肪が500mg/dL以上の場合は、 原因の確認と治療を先延ばしにしません。

浅井 昭雅(医師・博士(医学)・日本腎臓学会認定腎臓専門医)

2026年07月27日 00:00

医療法人雅会 長久手クリニック

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