なんのために血糖値を下げるのか?透析予防を軸とした糖尿病の治療|長久手クリニック
長久手クリニックでは腎臓専門医として腎臓病予防を軸とした糖尿病への治療をおこなっております。
目次
- 長久手クリニックの糖尿病治療の軸
- 腎臓は悲鳴をあげてくれる臓器です
- 腎臓を意識することは脳や心臓を守ることにつながります
- 糖尿病の症状
- 糖尿病の初診時どんな検査をする?
- 糖尿病治療の3本柱「食事療法」「運動療法」「薬物療法」
- 糖尿病性腎症
- SGLT2 阻害薬について
- 脂肪肝・歯周病
長久手クリニックの糖尿病治療の軸
なんのために糖尿病の治療をするのでしょうか?なんのために血糖を下げるのでしょうか?ただ単に血糖を追っているだけではないでしょうか?長久手クリニックは血管を守るためと答えます。
高血糖が血管を傷つける一つの機序は、血液中の血糖が多くなると血管の表面を覆って守っているヒアルロン酸やヘパラン硫酸などからなるゲル状のもの(グリコカリックス)が剥がれ落ちます。血圧が高いとさらに剥がれ落ちる量が多くなります。剥がれ落ちると本来守られているはずの血管内皮が露出してしまい障害をうけ、コレステロールなどが障害された血管にくっつき動脈硬化につながります。
これらから守るために、血糖を下げる・血圧を正常域にする・コレステロールを下げる。 この3本柱が、血管をまもることにつながります。 腎臓は血管に流れる血液から尿を作って老廃物を捨てる臓器です。(それだけではない色々な機能を担っている素晴らしい臓器です)
腎臓は血管の塊といっていいです。 腎臓の障害=血管の障害と言い換えても大げさではありません。 長久手クリニックは、腎臓=血管を守ること。
「腎臓=血管を守ること」を第一に考えて、糖尿病の治療を行っています。
現在、人工透析導入となる原因疾患の第1位が糖尿病で、年間約1万6000人が新規導入となっています。
長久手クリニックの医師と看護師は透析医療にも携わってきましたので、その恐ろしさを実感しております。
どのように透析は防げばいいのでしょうか?腎臓が悪く(クレアチニンの上昇やeGFRの低下)なってきてから、腎臓を意識すればよいのでしょうか?
私達はその前の段階の「尿の異常」の段階から、腎臓を意識していただければと思っています。
腎臓は悲鳴をあげてくれる臓器です
腎臓と同じように血管が重要な脳や心臓と異なり、腎臓は悲鳴をあげてくれる臓器です。脳の血管が障害された際には、脳出血や脳梗塞です。心臓の血管が障害された際には、狭心症や心筋梗塞です。
これらを予見する方法はあるのでしょうか?残念ながらなかなか難しいのが現状です。
しかし、腎臓は、腎臓が障害されるまえに悲鳴をあげてくれます。この悲鳴を聞いてあげることで、腎臓の障害を予防していけます。
腎臓の悲鳴は尿の異常です。 糖尿病による腎障害(糖尿病性腎症)は、腎臓の機能が落ちる前に、尿の中に糖分や蛋白(アルブミン)が漏れ出てきます。 特に尿に蛋白(アルブミン)が漏れていると腎臓の機能が落ちていく速度が早いです。 悲鳴に気づき・耳を傾けて、尿蛋白を減らすことを目標として糖尿病の治療を行っていきましょう。
腎臓を意識することは脳や心臓を守ることにつながります
腎臓≒血管の塊です。そして、脳や心臓など重要な臓器は血管で栄養されいます。すなわち腎臓を意識して糖尿病の治療をすることは全身の血管をまもることにつながり、脳卒中や心筋梗塞を防ぐことにつながっていきます。
糖尿病の症状
糖尿病についてまとめていきます。・喉の渇き
・尿の回数が増える
・尿量が増える
・体重が減る
・倦怠感
・頭がぼーっとする
上記のような症状は血糖値が300など高くなったときに自覚しやすいです。
血糖値がそれほど高くないと自覚症状がないことがよくあります。
糖尿病の初診時どんな検査をする?
下記のような採血と尿検査を行います。
・血糖値・HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー):月単位の血糖の状態を知ることができます。
・抗体検査(抗GAD抗体など):免疫の異常による糖尿病ではないか調べます。
・Cペプチド:インスリンの分泌能を評価できます。
・尿糖、尿蛋白:糖尿病は腎臓病、ひいては透析となる原因の第一位です。定期的な尿検査が重要になります。
急激な糖尿病の悪化や発症が確認された方は、すい臓がんの合併がないか当院でCTの検査を行う場合がございます。
糖尿病治療の3本柱「食事療法」「運動療法」「薬物療法」
食事療法
「夕食はなるべく早い時間に食べるようにしましょう」
「寝る前3時間は食べるのをやめましょう」
食事療法の基本は、3食きちんとゆっくりと食べることです。
まずは3食きちんと食べることから始めましょう。
一食抜いてしまうと、次の食事で血糖が上がりやすくなるからです。
また、寝る前3時間は食べないのも重要です。食べてすぐに寝ると翌朝の血糖値が上がってしまいます。
どんなに忙しくても、食事には20分以上の時間をかけるべきです。ゆっくりよくかむことで、食事中わずかに上昇した血糖が満腹中枢を刺激します。
また、咀嚼により脳内ヒスタミンやセロトニンの神経系が活性化し、これによっても満腹中枢が刺激されます。
<具体的な食事療法>
・食物繊維を多く含む、豆類、根菜類、海藻類、ナッツ類、きのこ類などを積極的に摂取しましょう。
・海藻類・きのこ類 海藻やきのこを多く食べましょう。これらの食材に多く含まれる食物繊維には血糖の急激な上昇を抑える効果があるからです。
・ 野菜類 慢性腎臓病が無い方は、トマト、キュウリ、レタス、ホウレンソウ、ニンジンなどをたくさん食べましょう。
慢性腎臓病の方は、カリウム制限が必要な場合がありますので、ご相談をお願いします。
・果物類 果糖を多く含みますので、なるべく避けましょう。ビタミンやミネラルの不足を気にされる方もいらっしゃいますが、野菜をたくさん取れていれば問題ありません。
・飲み物 清涼飲料水やスポーツドリンクは血糖を上げてしまいます。 夏は、熱中症の予防をうたいスポーツドリンクの宣伝が目立つようになりますが、糖尿病の患者さんは、通常の水やお茶(麦茶、ウーロン茶)を多く飲み、塩分は味噌汁や梅干しで補うようにしましょう。
慢性腎臓病や高血圧があって塩分制限の指導を受けている方は、体重を測定し急速に減少しているようでしたら、脱水があると考えて塩分補給しましょう。
緑茶や玉露での水分補給はカリウム制限がある場合は避けましょう。
・食べる順番
食物繊維が豊富な野菜を最初に食べて、次に魚や肉を食べ、ご飯などの糖質を最後に回す方が、血糖は上がりにくくなります。
また、魚や肉をご飯より先に摂取することで、腸からのインクレチン(GLP-1とGIP)の分泌が促進し、インスリンの初期分泌が改善するといわれています。
運動療法や嗜好品との付き合い方や生活習慣
運動療法や嗜好品との付き合い方や生活習慣 隙間時間でできるプチ運動をルーティンにすることでインスリン抵抗性を改善でき、血糖や脂質代謝、血圧の改善や動脈硬化の防止が期待できます。
ただ、仕事が忙しく毎日30分も歩く時間を取れない方が多いと思います。仕事の合間にこまめに体を動かしたり、エレベーターを使うのをやめたりしましょう。
●嗜好品との付き合い方、お酒やたばこはやめるべき?
・アルコール
血糖コントロールが良好なら、量を減らせば飲酒自体は可能です。
具体的には、日本酒で1合、ビールで缶ビール(350mL)1本、ワインでグラス2杯程度を週に2〜3日なら糖尿病は悪化しません。
もちろん、アルコール性肝硬変や膵炎、高度の高トリグリセリド血症の人は禁酒が必要ですが、そうでなければ節酒でもよいでしょう。
・たばこ
喫煙は動脈硬化を進め、心臓病を起こしやすくするほか、全ての細胞機能を落として老化を早めます。HDLコレステロールも下げてしまいます。また、喫煙は脂肪細胞から分泌される善玉アディポカインであるアディポネクチンの分泌量を抑え、糖尿病の悪化につながります。禁煙しましょう。
・ストレス
ストレスは様々な刺激が原因で引き起こされる身体的・精神的な緊張感です。
適度な緊張感は効率を高めますが、不快な刺激や長引く緊張感は弊害をもたらします。自律神経が緊張したり、交感神経と副交感神経のバランスが崩れたりすることで、カテコラミンやコルチゾールなどのインスリン拮抗ホルモンが分泌され、血糖上昇や遊離脂肪酸上昇、血圧上昇が生じ、結果として糖尿病の悪化にもつながります。
現代のようなストレス社会では「ストレスの解消」といってもなかなか難しいのですが、ぜひ食べること以外の趣味を持ちましょう。
・睡眠
睡眠はホルモンバランスを改善して頭を明瞭にします。翌日安全に行動できるようにするためには不可欠です。
睡眠時間が長過ぎても短過ぎても、糖尿病の発症と悪化の危険が増すことが知られています。6〜7時間の睡眠を心掛けるようにしましょう。
糖尿病性腎症
現在、人工透析導入となる原因疾患の第1位が糖尿病で、年間約1万 6000人が新規導入となっています。
長久手クリニックの医師と看護師は透析医療にも携わってきましたので、その恐ろしさを実感しております。
一緒に合併症予防、透析予防を目指しましょう!
・尿検査とeGFR の評価で早期診断を
糖尿病性腎症の診断には、尿検査とeGFRの測定が重要で、かなり進行した腎不全にならないと自覚症状は出ません。
「微量アルブミン期(第2期)」、つまり早期腎症の段階で診断することが重要です。第2期であっても血糖と血圧を良好に保てば、腎症の進展を阻止でき、第1期への回復も期待できます。
随時尿検査で、3回中2回以上、尿アルブミンが30~299mg/gCrなら、第2期と診断します。尿アルブミンとeGFRは、3~6カ月に1回は評価しましょう。
腎症の発症を予防し、進行を阻止するためには、血糖、血圧、脂質の良好なコントロールが重要です。
具体的には血糖はHbA1cを7.0%未満、血圧は130/80mmHg未満、LDL-Cは120mg/dL未満に保ちます。
高血圧合併例では、塩分制限(1日6g未満)とします。
・糖尿病性腎臓病ではSGLT2阻害薬を優先
SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン、ダパグリフロジン、カナグリフロジン)には、腎機能保護効果、腎症進展の抑制効果があります。
米国糖尿病協会(ADA)のガイドラインでは、CKDを合併している場合は、SGLT2阻害薬を推奨しています。
長久手クリニックでも透析予防を目指して積極的にSGLT2阻害薬を処方しております。
SGLT2阻害薬については後述します。
・糖尿病性腎症以外の腎疾患を疑う場合は?(長久手クリニックが糖尿病治療を行う強み)
糖尿病性腎症の診断においては、他の腎疾患を否定することが重要です。
糖尿病性腎症以外の腎疾患を疑う場合
1.糖尿病の罹病期間が5年以下の場合
2. 糖尿病網膜症がない場合
3. 尿潜血が多い場合
4.急激に尿蛋白の出現が見られた場合
5.尿蛋白が非常に多い場合(5g/日以上)
6.急速に腎機能が低下する場合
7. 炎症反応、補体の異常を伴う場合
のいずれかに該当する場合は、他の腎疾患と鑑別するために腎生検を考慮すべきであり、愛知医科大学病院などの高度医療機関に紹介します。
なお、糖尿病患者の約15%は、他の腎疾患を併発していたという報告もあります。
SGLT2阻害薬について
SGLT2阻害薬には、血糖降下だけでなく、体重減少、血圧低下、脂質改善という多面的な効果があることから、心血管イベントの抑制と腎保護に関するエビデンスが集積しています。
2型糖尿病で、(1)アテローム動脈硬化性心血管疾患 の既往があるもしくはハイリスクである、(2)慢性心不全がある、(3)CKDがある のいずれかに当てはまる場合は、メトホルミン使用の有無にかかわらず、最初からエビデンスのあるSGLT2阻害薬を使用します。
SGLT2阻害薬を使用する際は、特に(1)脱水、(2)尿路感染症・性器感染症、(3)正常血糖ケトアシドーシス、(4)サルコペニア の4つに気を付ける必要があります。
(1)脱水 「1日当たり追加で水を500mL飲みましょう」
SGLT2阻害薬を内服すると、尿糖排泄に伴う浸透圧利尿のため、多尿・頻尿が生じます。そのため、飲水が不十分な場合は脱水症状を認めることがあります。
脱水は、脳梗塞や熱中症の発症を増加させたり、シックデイの病態を悪化させたりする危険性があるため、特に投与開始初期は、「1日当たり追加で水を500mL」と普段よりも多めに飲むようにしましょう。
(2)尿路感染症・性器感染症
尿糖排泄が増加するため感染リスクが増加します。特に女性では注意が必要です。
尿路感染を起こすと、腎盂腎炎、敗血症などの重篤な感染症に至る可能性があるほか、カンジダなどを生じます。
また、まれですが非常に重篤な性器感染症を起こすこともあります。 陰部のかゆみや排尿痛、残尿感、尿が濁る、頻尿といった症状が生じたら、すぐに受診してください。
腎盂腎炎に進行すると、腰痛、発熱などを来し、敗血症などに至るケースもあります。「過去2回以上、膀胱炎の既往がある患者」には、安全のため使用しないようにしています。
(3) 正常血糖ケトアシドーシス
SGLT2阻害薬の使用により、正常な血糖値(150mg/dL程度)にもかかわらずケトアシドーシスを来す例があることも忘れてはなりません。
SGLT2阻害薬により尿糖排泄が促進されることで、糖質がエネルギー源として利用できなくなると、内臓脂肪が代替エネルギーとして消費されます。その結果、ケトン体の産生が増えます。
SGLT2阻害薬の内服中は、通常の糖尿病性ケトアシドーシスとは異なり、高血糖を伴わないケトアシドーシスを来すことがありますので、全身倦怠感、悪心、嘔吐などの症状を見逃さないようにしましょう。
eGFR 45mL/分/1.73m2未満になると、SGLT2阻害薬の血糖降下作用は減弱するため、特にeGFR 30mL/分/1.73m2未満の場合については、血糖管理のためにGLP-1受容体作動薬の使用を推奨しています。
脂肪肝・歯周病
糖尿病と双方向に影響し合う病気が脂肪肝・ 歯周病です。
・脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患/非アルコール性脂肪肝炎[NAFLD/NASH])
2型糖尿病で有意に多いNAFLD (non-alcoholic fatty liver disease) は、組織診断または画像診断で脂肪肝を認め、アルコール性肝障害など他の肝疾患を除外した病態を指します。
肝細胞障害や線維化を認めない単純性脂肪肝(NAFL)と、脂肪変性や肝細胞変性(風船様変性)などを認める NASH (non-alcoholic steatohepatitis)を含む疾患概念で、NAFLDの1~2割をNASHが占めています。
NASHは肝硬変や肝癌に進行する可能性があるため特に注意が必要です。
なお、NAFLDは「非アルコール性」ですから、飲酒量としては純アルコールで男性30g/日未満、女性 20g/日未満が診断基準の一つになります。
日常診療においてNAFLDの中からNASHを見つけ出すには、肝線維化の指標である「FIB-4 index」が簡便で有用です。長久手クリニックでも検査しております。
FIB-4 index 1.3以上の場合は、肝線維化が進行している可能性があるため、愛知医科大学病院などの肝臓内科専門医に紹介します。年齢、血小板数、AST、ALTから計算します。
血糖降下薬としては、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬が肝病理組織を改善する可能性が示唆されており、積極的に使用しています。
・歯周病 (長久手クリニックが糖尿病治療を行う強み)
歯周病の症状は、慢性炎症による歯肉腫脹であり、触れると出血します。 進行すると歯がぐらつき、最終的には歯が抜けてしまいます。
血糖コントロールの不良は歯周病を重症化させます。
特に高齢、喫煙、肥満、免疫不全がある場合は頻度が高くなります。
また、歯周病が重症であるほど血糖コントロールは不良となります。
一方で、歯周病治療によって歯周組織の慢性炎症が改善すると、インスリン抵抗性が軽減し、血糖コントロールも良好になってきます。
歯周病は、心筋梗塞などの動脈硬化性疾患や感染性心内膜炎、呼吸器疾患、低体重児出産などの誘因となる可能性もありますので、長久手クリニックの内科と歯科で連携をとって治療しています。
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