波のように消えたり出たりする病気「ベーチェット病」との向き合い方と治療法|長久手クリニック
ベーチェット病の治療において、2026年に欧州リウマチ学会(EULAR)から最新の論文が発表されました。今回はこの最新の知見をもとに、これからの治療の道しるべについてお話しします。
【本記事の根拠となる論文】
Hatemi G, Ramiro S, Ozguler Y, et al. EULAR recommendations for the management of Behçet’s syndrome: 2025 update. Annals of the Rheumatic Diseases. Published online 2026. doi:10.1016/j.ard.2026.02.009
ベーチェット病は、1937年にトルコの皮膚科教授Hulusi Behçet先生により初めて報告された全身の炎症性疾患で、別名「シルクロード病」とも呼ばれています。
膠原病は一般的に持続的に悪化していくものですが、ベーチェット病は膠原病の一種でありながら、その進み方には非常に独特な「波」があります。
【ベーチェット病の波のイメージ】
その波が「出たり消えたり」を繰り返しているうちに大波になりつつ、
長い時間をかけて“ゆっくりと完成していく”イメージの病気です。
このように、急性の炎症が反復し、良くなったり(寛解)悪くなったり(増悪)するサイクルを繰り返すことが、診断や治療を考える上で非常に重要なポイントとなります。そして最初から全部の症状が揃わない、そして採血では特徴的な異常がでないがために診断には非常に時間がかかります。あとになって別の症状が出てきて「やはりベーチェット病だね」と診断になることも多いのです。
ベーチェット病の主な症状と診断
採血だけで確定診断できる病気ではなく、主に以下の症状の組み合わせから診断を検討します。
痛い口内炎が年に3回以上繰り返します。耳鼻咽喉科などでの確認が必要です。
痛くて赤く腫れる皮膚症状(結節性紅斑)や、ニキビに似た症状が出ることがあります。
月経前や月経中に悪化することが多く、婦人科等での確認も考慮します。
「ぶどう膜炎」という目の内部の炎症がないか、眼科での確認が必須となります。
採血などで針を刺した箇所が赤く腫れる反応です。
【当院でのHLA-B51検査について】
ベーチェット病に関連する白血球の型(HLA-B51)は、患者さんの約50〜60%で陽性となりますが、健康な方でも陽性になることがあります。また、保険適用外の自費検査で高額であるため、長久手クリニックではHLA-B51検査は実施しておりません。
「どの臓器に兆候があるか」で決める治療
最新の論文で強調されているのは、「病名に対して薬を決めるのではなく、いま、どの臓器が炎症のサインを出しているかによって治療の強さを変える」という考え方です。将来的に元に戻らないダメージを防ぎ、生活の質を守るための具体的な方針を見ていきましょう。
1. 皮膚や粘膜(口内炎など)の炎症サイン
治療の強さ:穏やかにコントロール
まずはコルヒチンや塗り薬から始めます。基本となるコルヒチンは、どちらかというと「口内炎の予防」のイメージです。長久手クリニックでは今まさに痛みが強くてお困りの患者さんには、中等量のステロイドを短期的に使用して改善するかトライすることもします。
ステロイドの長期継続は避けるべきとされています。改善が不十分な場合は、アプレミラスト(製品名:オテズラ)や、生物学的製剤のTNF阻害薬(製品名:アダリムマブBSなど)へのステップアップを検討します。
2. 目(ぶどう膜炎)の炎症サイン
治療の強さ:早期から強力に炎症を抑える
視力を守るため、早期から生物学的製剤のTNF阻害薬(製品名:アダリムマブBSなど)を積極的に使用することが世界的な標準となっています。「ステロイド単独で治療をしてはいけない」という強い方針も示されています。
3. 血管・神経・胃腸の病変
治療の強さ:迅速に対応
血栓や腸の潰瘍などは、後遺症を残さないために早期の強力な治療が必要です。神経病変を誘発する恐れがあるシクロスポリンの使用には細心の注意を払います。
論文が示す「希望」
論文には「年齢とともに病気の活動性は落ち着く傾向がある」と明記されています。
早期から生物学的製剤という選択肢を使うことで、副作用を抑えつつ体を守る確率が格段に上がっています。
あなたに合わせた最適な治療を
本来、ヘルペスなどの除外診断が必要となります。可能でしたら皮膚科で天疱瘡、婦人科で外陰部ヘルペスの除外診断後や、眼科でぶどう膜炎の有無を確認いただけますと幸いです。
が、そこまで余裕がない方も多いですよね。
ベーチェット病に該当する症状があるなと前々から薄々思っていたが、口腔内のひどい口内炎が出現しで食事や会話も取れない方やベーチェット病と診断されていたが大きな病院へ行きにくくなりご受診が途絶えている方も、お気軽に一度当院にご相談ください。
Hatemi G, Ramiro S, Ozguler Y, et al. EULAR recommendations for the management of Behçet’s syndrome: 2025 update. Annals of the Rheumatic Diseases. Published online 2026. doi:10.1016/j.ard.2026.02.009
浅井 昭雅 (医師 医学博士 日本リウマチ学会認定リウマチ専門医・指導医)



